忍者ブログ
Natural or Cordinater?
サブタイトル

お知らせ
PHASE0 はじめに 
PHASE1-1 偽りの平和①
PHASE1-2 偽りの平和②
PHASE1-3 偽りの平和③
PHASE2 その名はガンダム 
PHASE3 崩壊の大地
PHASE4 サイレント ラン
PHASE5 フェイズシフトダウン
PHASE6 消えるガンダム
PHASE7 宇宙の傷跡
PHASE8 敵軍の英雄
(原題:敵軍の歌姫)
PHASE9 消えていく光
PHASE10 分かたれた道
PHASE11 目覚める刃
PHASE12 フレイの選択
PHASE13 宇宙に降る星
PHASE14 果てし無き時の中で
PHASE15 それぞれの孤独
PHASE16 燃える砂塵
PHASE17 カガリ再び
PHASE18 ペイバック
PHASE19 宿敵の牙
PHASE20 おだやかな日に
PHASE21 砂塵の果て
PHASE22 紅に染まる海
PHASE23 運命の出会い
PHASE24 二人だけの戦争
PHASE25 平和の国へ
PHASE26 モーメント
PHASE27 果てなき輪舞
PHASE28 キラ
PHASE29 さだめの楔 
PHASE30 閃光の刻
PHASE31 慟哭の空
PHASE32 約束の地に
PHASE33 闇の胎動
PHASE34 まなざしの先
PHASE35 舞い降りる剣
PHASE36 正義の名のもとに 
PHASE37 神のいかずち
PHASE38 決意の砲火
PHASE39 アスラン
PHASE40 暁の宇宙へ
PHASE41 ゆれる世界
PHASE42 ラクス出撃
PHASE43 立ちはだかるもの 
PHASE44 螺旋の邂逅
PHASE45 開く扉
PHASE46 たましいの場所
PHASE47-1 悪夢はふたたび①
PHASE47-2 悪夢はふたたび②
PHASE48-1 怒りの日①
PHASE48-2 怒りの日②
PHASE49-1 終末の光①
PHASE49-2 終末の光②
PHASE50-1 終わらない明日へ①
PHASE50-2 終わらない明日へ②
ブログ内検索
機動戦士ガンダムSEED 男女逆転物語
[9]  [10]  [11]  [12]  [13]  [14]  [15]  [16]  [17]  [18]  [19]  

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「人質にするために助けたわけじゃありませんから…」
「そうだよなぁ。するなら彼氏だよなぁ」
キラがうつむいたまま答えると、フラガは腰に手を当てて頷いた。
「異議あり!」
「弁護人は言葉を慎んでください!」
女性陣からの一斉攻撃に、フラガは肩をすくめた。

拍手


「私たち、マードック軍曹にすごく怒られたの。おまえたちは危険って言葉すら知っちゃいねぇのかぁ!って」
サイもミリアリアも罰として艦内トイレ掃除一週間が言い渡され、キラは軍法第3条B項違反、第10条F項違反、第13条3項抵触により、銃殺刑になることが決まった。
もしもキラが軍人だったなら…だが。

もう勝手なことはするんじゃないよ、と、艦長とフラガからは微笑まれ、ナタルの冷たい顔で見送られたキラは、心底ほっとしたと同時に、あの大人たちもよっぽどヒマなのかな…と不謹慎な事を考えた。
それに、あとで自分もマードックさんに叱られに行こう。
一番怒ってたのは、あの人だ。
(それは、私たちの事をすごく心配してくれたからだ) 

「カズイが、キラとあの男の子の話を聞いたって」
サイは、イージスに乗っているのがキラの友達だと知っていた。
「正直言うとね…少し、心配だったんだ」
サイは目を伏せた。
「もう、キラが帰ってこないんじゃないかって…私たちを見捨てて、コーディネイターの友達と行っちゃうんじゃないかって」
「サイ…」
「でもよかった。ちゃんと帰ってきてくれたもんね」
微笑むサイに、キラはどう答えていいかわからない。
自分を信じてくれるサイに、迷った…とは言えなかった。
あの温かい優しさに、思わず飛び込みたいと思ったとは口が裂けても言えない。
けれど、自分を信じると言ったサイの言葉が、あの時自分を引き止めたことも事実だ。呪縛は、キラの自由を奪っていた。
そしてそんな彼らの話を聞いている者がいたとは、二人とも知らなかった。

「確かに、合流前に追いつくことはできますが…」
L4周辺域の立体航宙図を見ながら、ニコルが呟く。
ヴェサリウスとアークエンジェルのにらみ合いの間に、足つきとの差を詰めていたガモフでは、彼らと地球軍第8艦隊との合流までに仕掛けるか、仕掛けないかで、ブリーフィングを繰り返していた。
「これではこちらが月艦隊の射程に入るまで、10分程しかありませんよ?」
ニコルは、リスクの高い強襲作戦に異議を唱えた。

「臆病者は黙っているんだな」
いつだって年下のニコルを侮るイザークは、そんな彼の慎重論を一蹴した。
「俺は10分もあるのに、そのまま合流するあいつを見送るなんて、ごめんだけどね」
してやったりという顔でイザークが言うと、ディアッカが援護する。
「同感だな。奇襲の成否は、その実働時間で決まるもんじゃない」
「それは…わかってますけど…」
ニコルは不満そうに言葉を切った。
そして(一番心配なのはあなたがたじゃないですか)と、続きは心の中でつぶやいた。
ヴェサリウスは、ラクス・クラインをラコーニ隊の艦に引き渡したら、すぐに戻ると打電してきていた。
イザークが焦っているのはそのためだ。
何しろ、ヴェサリウスにはアスラン・ザラが乗っているのだから。
「それまでに、足つきは俺たちで沈める。いいな!」
「OK!」
「…わかりました」
ニコルも渋々承知する。今回もまた、何か起きないといいけれどと思いながら。

「ハロ、ハロ、アスラーン」
ポンと手の中に飛び込んできたボール型ロボットを受け止めると、アスランはその向こうにラクスがいることに気づいた。
「ラクス…」
「ハロがはしゃいでいるよ。久しぶりにきみに会えて嬉しいみたいだ」
「まさか」
アスランがハロを見るとハロはパタパタと耳を動かしたが、特に興味を惹かれる様子でもなく、彼女はすぐラクスに視線を移した。
「あなたは大切な客人ですが、ヴェサリウスは戦艦です。あまり部屋の外をウロウロしてはいけません」

ハロを受け取ったラクスは、壁に体を預けて休むと、ほっと一息つく。
「どこに行ってもそう言われるので、つまらないな」
「仕方ないでしょう。そういう立場なんだから…」
アスランは久々に会ったラクスが、モニターで見た時ほどはやつれて見えず、顔色が悪いわけでもないことに安心していた。
無論ヴェサリウス収容後、すぐに軍医の診察を受けたのだが。

「何?アスラン?」
「ああ…いえ、体の具合はどうかと思って…その、人質にされたりと、いろいろあったから」
改めてまっすぐ見つめられると少し気後れする。
今回の視察についても、ちゃんと連絡を取り合っていればわかったことなのに、怠っていた…本当はそれを真っ先に謝らなければいけなかったのに、機会を逃してしまっていた。
そこでアスランはなるべく動揺を見せないよう、気遣いを示した。

ラクスはわかっているというように微笑んでから言った。
「僕は元気だよ。あちらの艦でも、きみの友達が良くしてくれたし」
それを聞いてアスランは内心ギクリとした。
「キラさんは、とても優しい人だね。そして、とても強い」
「あの子はバカだわ!軍人じゃないって言ってたくせに…まだあんなものに…あの子は利用されてるだけ。友達とかなんとか…あの子の両親は、ナチュラルだから…だから…」
自分でもわけのわからない苛立ちを感じたアスランは、呑気そうに聞こえるラクスのその言葉につい反論した。
「私の言うことよりナチュラルの言うことを聞いて、軍人でもないくせにあんなものに乗って…」
なんだか支離滅裂なことを言ってる…と思ったが、止まらない。
「それを守るために、私と…自分と同じコーディネイターと戦うなんて」
アスランの思いもかけない激しさを見て、ラクスは静かに言った。
「きみと戦いたくないと、言っていたよ」
「私だってそうよ!誰があの子と…」
アスランの反論を受けながらラクスは困ったように笑った。

―― それがきみたちの本音なのに、なぜ戦うことをやめられないんだろう。
戦争だからと、一言で片付けてしまっていいものなのか…

アスランもその矛盾に気づき、さらには自分の感情的な爆発を恥じて急激に熱を冷ましていった。
ラクスが手を伸ばし、いたわるようにアスランの頬に触れようとしたが、アスランはそれを避け、代わりに敬礼した。
「失礼しました。では私はこれで」
「…辛そうな顔ばかりしているね。この頃のきみは」
ラクスは手をおろし、アスランは視線を落とした。
「ニコニコ笑って、戦争はできないもの」

アークエンジェルと第8艦隊の合流が30分後に迫っていた。
楽天的なラミアス艦長の言葉に答えず、索敵を密に行うよう指示するナタルと彼女の間に、相変わらず冷えきった空気が流れている頃、カズイは自分たちもこの合流により、アークエンジェルから降りられるのではないかとサイに話していた。
マリューの言葉では「しかるべき所と連絡が取れ、処置が決定するまで」ということだったので、将官クラスが指揮を執る艦隊となれば当然その「しかるべき所」にあたるだろう。

しかし問題がひとつある…
「キラはどうなるんだろう?降りられんのかな?あれだけいろんなことやっちゃってさ」
それはサイも少し前から懸念していたことだった。
この艦ではキラは自分たちの仲間だけれど、外に出れば「コーディネイター」というレッテルが貼られてしまう。
今後、キラがいやな目にあうかもしれないということは、はっきり想像はできないが、予想はできる…といったところだ。
そこにキラが現れたので、サイとカズイは慌てて言葉を飲み込んだ。
しかし、さらにその後ろからは思いもかけない人物が現れた。
「フレイ!?大丈夫なの?まだ、休んでた方が…」
サイは幽霊のように立つフレイに駈け寄ったが、フレイは軽く頷くと、そのまま彼女をやり過ごした。サイはあっけにとられて彼を見送る。
キラは息を潜めて下を向いていたが、フレイが自分の目の前に立つと、さらに体を硬くした。再び、彼の言葉が自分を傷つけるのではないかと無意識に防衛本能が働く。しかし、フレイの声は思いのほか穏やかだった。
「キラ…あの時は…ごめん」
キラも含め、皆フレイの言葉に驚いてまじまじと彼を見つめた。
「あの時、俺…パニクってて…すごいひどいこと言った…本当にごめん」
フレイはうなだれ、キラに謝罪の言葉を述べた。
自信家で、いつも人の中心にいて、時に鼻持ちならないフレイのそんな殊勝な姿を見るのは初めてだった。
「キラは…一生懸命戦って、俺たちを守ってくれたのに…俺…」
そんなフレイの消え入りそうな声に、キラは思わず叫んでしまった。
「フレイっ…そんな…いいんだよ、そんなこと……あの時は…」
サイもカズイも、あのフレイが自分たちが何も言わないのにこうしてキラに自分から謝罪に来たということに驚いていた。
「俺、ちゃんとわかってるんだ。キラは頑張ってくれてるって…なのに…」
「あ、ありがとう、フレイ。私の方こそ、お父さん守れなくて…」
キラはそれ以上言わなくていいと言わんばかりに、精一杯の言葉をかける。
わかってくれれば…フレイがわかってくれれば、それでいい。
「戦争って…嫌だよな。早く終わればいいのに…キラだって、戦争がなければ戦わなくて済むんだもんな。俺たちもキラも、皆、元の生活に戻れるんだもんな」
フレイの言葉は、キラの傷ついた心に届いた。
「そう…だね」
(そうだ…戦争がなければ、こんなことにはならなかった…)
キラはうっすらと涙の滲む眦で、優しい笑顔を向けるフレイを見つめていた。
けれど聡いサイは、この光景に何か釈然としない思いを抱いていた。
フレイとキラの和解は心から嬉しい。
しかし一体、フレイにそう思わせる何があったのだろうか、と。
あれだけ激しく感情を爆発させ、キラへの怒りを向けたフレイが、何をきっかけに今の言葉をキラに告げることになったのだろう?

その時、艦内にけたたましくアラートが響き渡った。
Nジャマーが展開され、レーダー波が大きく干渉を受け始める。
現れたのはアルテミス以来こちらをロストしていたものの、またしても追いついてきたあのローラシア級だった。熱紋を確認したトノムラが、出撃したモビルスーツはブリッツ、バスター、デュエルとコールする。
それを聞いたキラたちも慌てて持ち場へと向かった。
途中、キラは飛び出してきた女の子にぶつかって弾き飛ばしてしまった。
「あ、大丈夫?」
キラが女の子に手をさし出すより早く、横から彼女の体を起こし、立たせる姿があった。フレイだった。
彼はそのまま「このお姉ちゃんが戦って、守ってくれるからね」と女の子に言った。
「だから安心していいんだよ…悪い奴はみ~んなやっつけてくれるから」
「ホント?」
女の子は言い、フレイはうん、と頷いている。
キラはその善意とも悪意ともとれる言葉を聞いて戸惑ったが、サイに呼ばれて先を急いだ。
「そうだよ…み~んなやっつけてもらわなくっちゃな」
フレイはそれを見送ってニヤリと笑う。
その顔のあまりの冷たさに女の子は怯え、逃げるように駆け出した。

ミリアリアからの情報によれば、敵はローラシア級が1、前回右腕を切り飛ばしたデュエルと、火力に勝るバスター、そしてアルテミスをだましたミラージュ・コロイド搭載のブリッツだという。
「あの3機!」
「APU起動。ストライカーパックは、エールを装備します。カタパルト接続。ストライク、スタンバイ。システム、オールグリーン。進路クリアー。ストライク発進です」
「キラ・ヤマト、行きます!」
ストライクが再び戦場を駆ける。

第8艦隊がそこまで来ている。耐え抜けば、勝てる。
誰もがそれを頼みとしながら、ザフトのタイムアタックに臨むことになった。
「イーゲルシュテルン、作動!アンチビーム爆雷用意!艦尾ミサイル全門セット!」
しかし直後、アークエンジェルは高エネルギー収束火線砲を受け、それが艦体をかすったために大きく揺らいだ。3機のガンダムが密集してギリギリまで射線を隠し、アークエンジェルの回避を遅らせたのだ。
伊達に戦闘回数を稼いだわけではないようだ。
「機体で射線を隠すとは!味なことやってくれるじゃないか!」
キラより先に出たフラガがバスターに攻撃を仕掛ける。
「モビルスーツを引き離す!ニコル!足つきは任せたぞ!」
イザークは各個に応戦及び攻撃を命じる。仮にも赤服なのだから、手柄は自分でもぎ取ればいい。自分はあの忌々しい白いヤツだ…
「ストライクって言ったなっ!」
残り時間はそうはない。
(すぐに仕留めてやる!)

こちらに向かってくるブリッツに、ナタルがバリアントで弾幕を張る。
しかしやがてその姿をロストすると、マリューはブリッツがミラージュ・コロイドを展開したことを悟った。
「実弾攻撃に切り替えて!」
マリューはブリッツがミラージュ・コロイド展開中はPS装甲が同時には展開できない弱みをつくため、実弾攻撃を行うようナタルに命じた。 
「アンチビーム爆雷発射!艦尾ミサイルを対空榴散弾頭に換装!」
ブリッツが不用意に放ったビームライフルによって位置を推測され、バラバラと襲い掛かる榴散弾に、ニコルはたまらずミラージュ・コロイドを解除し、PS装甲を復活させた。
「へぇ、やりますね」
手ごたえのある相手に、ニコルは心なしか楽しそうだった。
「元々そちらのものでしたっけね。弱点もよくご存知だ!」
モビルスーツに加え、ローラシア級からの援護攻撃もあるアークエンジェルは押され気味だ。ランダム回避を繰り返し、ナタルも弾幕を張ってところどころゴットフリートで応戦する。
しかし被弾箇所は徐々に増え、ビームに耐えるラミネート装甲もダメージを受けるたびに温度が上昇し、排熱が間に合わない。
いかな強度を備えるアークエンジェルも、先ほどの火線砲までいかなくても、あと2発も艦砲をくらえば持たないだろう。
「ストライクとゼロは!?何をしている?!」
「デュエル、バスターと交戦中です!」
再び、ブリッツが向かってくる。

「今日は逃がさん!」
イザークはひたすらまっすぐストライクに向かってきた。
当然とはいえ、一切の手加減がない。
素早さも、太刀筋も、ライフルやグレネードの使用にも、何一つ迷いのない敵だ。
キラはその気迫に押されながらも、絶対に負けられないと応戦していた。
(フレイが、私が戦っていることを見ていてくれた。赦してくれた)

―― 戦争なんかイヤだと考えている自分の気持ちをわかってくれた…

「ここでやられてたまるか!」
キラは再びデュエルを押し返し、イザークはギリギリと歯噛みした。

(よし!)
ブリッツは最初に戦ったときのように、アークエンジェルの艦底に取り付いた。
アークエンジェルは艦砲が使えなくなり、ナタルはストライクの援護はまだかと叫ぶ。しかしデュエルに張り付かれたキラは当然動くことができない。
ゼロも同様、バスター相手で手一杯だ。
ブリッツはレーザーライフルで至近距離からアークエンジェルに攻撃を仕掛ける。堅守を誇る新造戦艦も、さすがにこの集中攻撃に抗う方法がなかった。
何より、今の彼らには取り付いたブリッツを攻撃どころか振り落とす策すらないのだ。
「キラ、キラ!ブリッツに取り付かれたわ。戻って!」
キラはミリアリアの声にはっと息を呑んだ。
(モビルスーツに取りつかれた…アークエンジェルが………沈む…?)
バーナードが、ローが、そしてモントゴメリーが沈んでいったように。
(ダメだ…私の帰る場所…友達がいる場所…そして、フレイがいる場所。約束を、今度こそ約束を守らなくちゃ!絶対に皆を守らなくちゃ!)
そう思った瞬間、キラの中を何か熱いものが駆け巡り、やがて突如温度を失って急速に冷えていった。何かが弾け、視界が急激にクリアになる。
世界が沈黙して、研ぎ澄まされた聴力が気配を掴んだ。

「アークエンジェルは…沈めさせやしない!」

飛び込んできたイザークを、キラは体を低くしてかわした。
相手の動きを冷静に見切り、ガラ空きの左のボディを斬り抜けて、そのままコックピットを少し破壊して退く。
しかし強気のイザークは、傷を負わされてもひまない。
デュエルはライフルでストライクを何度も射程に捉える。
しかしことごとく避けられ、ついには離脱されてしまった。
「かわしたっ!?」
イザークはその動きに驚愕した。
(ナチュラルの動きが…俺を凌駕するだと!?)
瞬間、イザークの血潮が沸点に達した。
一方ニコルはアークエンジェルの硬い装甲の破壊作業に忙しく、気づいた時はすでにストライクに背後をとられていた。自分たちコーディネイターが作ったNジャマーのおかげで、レーダーの索敵範囲がかなり狭まるとはいえ、アラートが出てから背後に気配を感じるまでの時間の短さは異常だった。
ニコルは迫るストライクに為す術がなかった。
「やめろーっ!」
キラはブリッツを力技で引き剥がし、そのまま蹴り飛ばした。
「うわああああ!」
モビルスーツ戦で、蹴られるなどという経験をした事がないニコルは、衝撃に驚いてそのままアークエンジェルから離脱する。
その時ストライクに逃げられ、追ってきたデュエルがブリッツを追い越した。
ニコルはそれを見て(危ない!)と直感的に感じた。
(今のストライクは、僕たちが戦ってきたヤツとは少し違う!)
「もらったーっ!!」
ストライクは後ろから襲い掛かるデュエルをかわすと、素早い動きでアーマーシュナイダーを抜き取った。
ニコルは自身の悪い予感が当たることを目の当たりにした。
「イザークッ、逃げて!」
ストライクは的確にデュエルの左のボディを狙った。
そこはコックピットにも近い、先ほど攻撃を受けて弱っている箇所だ。
通信機から聞こえる小爆発音、そしてイザークの叫び声と同時にデュエルは動きを止め、ニコルはそのまま流れてきた機体を受け止めた。
デュエルはピクリとも動かない。
「イザーク!イザーク!大丈夫ですか!?」
返事がない。ニコルはディアッカを呼び、イザークに何か異変が起きたことを伝えた。
それにもう時間がない。じきに月艦隊が来る。
(このタイムアタックは、失敗だ)
ブリッツはデュエルを支え、合流したバスターは両者をガードし、周囲を警戒しながらガモフへと撤退していった。
「イザーク!大丈夫か、イザーク!」
「痛い…痛い…痛いぃ…!」
ディアッカが呼びかけるデュエルのコックピットでは、イザークがストライクの攻撃で割れたヘルメットによる傷の痛みをこらえ、呻いていた。

やがて撤退したローラシア級に代わり、姿を現したのは第8艦隊だった。
ナチュラルながらバスターと互角に戦ったフラガは、ハンガーに戻ると、共に危険を乗り越えたストライクのキラを迎えにいった。
「やつら、引き上げていったぜ。よくやったな、お嬢ちゃん」
どこか浮世離れしたような表情で、空を見つめていたキラは、フラガの声に、「ああ…」と顔を向けた。
「大尉?」
フラガは一瞬、キラの様子がいつもと違うような気がして怪訝そうな顔をしたが、よく見ればいつも通りの変わりないキラだったので、ふっと笑って褒めた。
「よくやった、おまえはすごいヤツだ」

フレイは戦いを終えたアークエンジェルから、近づきつつある第8艦隊を見つめていた。
(あいつ、俺との約束を守ったよ、父さん)
第八艦隊は悠々と歩を進ませ、フレイの視界一杯に広がって行った。
(そうだよ…みんなやっつけてもらうんだ…でないと…戦争は終わらない)
フレイは声を出さずに唇だけでつぶやいた。

「おまえたちコーディネイターを…みんな」
PR
この記事にコメントする
Name
Title
Font-Color
Mail
URL
Comment
Pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

secret
制作裏話-PHASE11-
キラの初の種割れ回です。
未だになんなのかよくわからないこの「種」の正体。
実はそのせいで「種が割れた」と書くのがとてもいやで、逆転では「感覚が研ぎ澄まされる」という表現に終始しました。なお、逆転ではカガリもラクスも種は割れません。

フレイのキラ篭絡が始まりますが、やはり男→女では弱いですねぇ。
ここは女→男だからこそ面白いのだということがひしひしと感じられ、「やっぱり種の男女逆転は無理があるなぁ…」と苦しかったあたりですね。

反面、ここでご尊顔にケガをしたイザークは書いていてとにかくとても楽しい。
というか、今思えば逆種はイザークが一杯書けたのでとても楽しかったです。
ディアッカは後半に出番が増えるので、序盤は敢えて意地悪で狡猾っぽく書いています。これによって、後の彼の変化を際立たせたかったからです。

アスランとラクスの会話は、言葉遣いに苦労しました。
性別が逆転している分、本編よりは2人の関係をより「友達」っぽくしたかったので、初めは軍人ぶってよそよそしい口を利いたアスランも、すぐにくだけた友達口調に戻ります。
ラクスが病気のせいもあり、この後も2人が「心を許しあう友人関係である」という描写は多く入れ込んであります。

なぜなら、せっかく元婚約者というおいしい設定があるのに、本編での2人はよそよそし過ぎてほとんど絡まず、つまらんと思っていたからです。
特に相手が定まった運命ではもう少し遊びが欲しかった。
意味もないくだらない女難より、トチ狂っているアスランをただ1人、叱咤して断罪できるラクスと、シンやキラやカガリやミーアには強く出るくせに、ラクスにだけはてんで頭が上がらないアスランがからんだ方が、視聴者にもウケたと思います(本編の2人の陰険夫婦漫才が大好きです)

なので逆転での2人は「互いをよく知る、気安い仲」であり、「非常に親しい友人」として描けたのは、逆デスでのミーアとの関係も含め、かなり満足でした。

これも裏話ですが、私は逆種の主役級4人の年齢をスタート時にそれぞれ個別に設定していました。
もちろん本編では4人とも16歳で同い年なんですが、私の中ではキラ16歳、カガリ17歳、アスラン18歳、ラクス20歳、という感じでした。
最終回の頃にはキラ17歳、アスラン18歳、カガリ19歳、ラクス20歳というイメージです。

実年齢ではなく、それぞれの成長度合いを示していますが、キラもカガリも色々と乗り越えてステップアップしています。特にカガリは後半、父を失い、やがて為政者の顔を示し始めるので2歳アップ。
でももうこの時点で完成されていたラクスは特に変わらず、もともと大人っぽかったアスランは迷ってばかりでさほど「成長」はしていない、ということで据え置きです。

まぁ肉体年齢というよりは精神年齢ですね。
になにな(筆者) 2011/03/02(Wed)01:16:26 編集



Copyright (C) 逆転SEED All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog | Template by 紫翠

忍者ブログ | [PR]