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Natural or Cordinater?
サブタイトル

お知らせ
PHASE0 はじめに 
PHASE1-1 偽りの平和①
PHASE1-2 偽りの平和②
PHASE1-3 偽りの平和③
PHASE2 その名はガンダム 
PHASE3 崩壊の大地
PHASE4 サイレント ラン
PHASE5 フェイズシフトダウン
PHASE6 消えるガンダム
PHASE7 宇宙の傷跡
PHASE8 敵軍の英雄
(原題:敵軍の歌姫)
PHASE9 消えていく光
PHASE10 分かたれた道
PHASE11 目覚める刃
PHASE12 フレイの選択
PHASE13 宇宙に降る星
PHASE14 果てし無き時の中で
PHASE15 それぞれの孤独
PHASE16 燃える砂塵
PHASE17 カガリ再び
PHASE18 ペイバック
PHASE19 宿敵の牙
PHASE20 おだやかな日に
PHASE21 砂塵の果て
PHASE22 紅に染まる海
PHASE23 運命の出会い
PHASE24 二人だけの戦争
PHASE25 平和の国へ
PHASE26 モーメント
PHASE27 果てなき輪舞
PHASE28 キラ
PHASE29 さだめの楔 
PHASE30 閃光の刻
PHASE31 慟哭の空
PHASE32 約束の地に
PHASE33 闇の胎動
PHASE34 まなざしの先
PHASE35 舞い降りる剣
PHASE36 正義の名のもとに 
PHASE37 神のいかずち
PHASE38 決意の砲火
PHASE39 アスラン
PHASE40 暁の宇宙へ
PHASE41 ゆれる世界
PHASE42 ラクス出撃
PHASE43 立ちはだかるもの 
PHASE44 螺旋の邂逅
PHASE45 開く扉
PHASE46 たましいの場所
PHASE47-1 悪夢はふたたび①
PHASE47-2 悪夢はふたたび②
PHASE48-1 怒りの日①
PHASE48-2 怒りの日②
PHASE49-1 終末の光①
PHASE49-2 終末の光②
PHASE50-1 終わらない明日へ①
PHASE50-2 終わらない明日へ②
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機動戦士ガンダムSEED 男女逆転物語
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カガリはトリアージで分けられた負傷兵の収容指示に忙殺されていた。
兵たちがドックの空き状況や医務室の状況について次々と連絡を入れてくる。
(アークエンジェル…)
その忙しさの合間に、カガリは見慣れた戦艦を見つめた。
入港直後、艦内からはおびただしい負傷兵が運び出されてきた。
艦も、出て行った時とは比べ物にならないほど傷つき、痛ましい姿は、またどれほどの辛い戦いをくぐり抜けてきたのだろうと想像させた。
(キラ…おまえはどうしてる?)
カガリは会いたいと逸る気持ちを押し殺し、眼の前の仕事に没頭していた。

拍手


「私どもの身勝手なお願い、受け入れてくださって、ありがとうございます」
マリューはウズミに深々と礼をした。
ウズミは穏やかな表情で「気にする必要はない」と手を上げた。
「ことがことゆえ、クルーの方々にはまたしばらく不自由を強いるが、それはご了解いただきたい。ともあれ、ゆっくりと休むことはできよう」
アークエンジェルの通信が回復しないままだったため、Nジャマーキャンセラーを載せたフリーダムから恐る恐る連絡を入れ、オーブからの返事を待つまでの間、クルーたちは気が気ではなかった。
やがて、1時間ほどで戻ってきた返信は、「武装解除及ビ全指示ニ従ウコトヲ条件ニ、貴艦ノ入港ヲ許可スル」というありがたいものだった。
ミリアリアが読み上げたそれを聞き、ブリッジでは大きな歓声が上がった。
「地球軍本部壊滅の報から、再び世界は大きく動こうとしている」
ウズミは手を組んで顎にあて、難しい表情を見せた。
「一休みされたら、その辺りのこともお話しよう。見て聞き、それからゆっくりと考えられるがよかろう」
ウズミは、彼らを受け入れたのはアラスカ壊滅についての情報が欲しいゆえであると、最初にはっきりと告げた。
(その方が互いに隠し事がなくていい)
マリューもフラガも納得の上だった。
「貴殿らの着ているその軍服の意味もな」
最後にウズミがつけ加えた言葉は、2人の心をチクリと刺した。
自分たちのような職業軍人にも、キラのように「自分はもう地球軍ではない」と言い切れる日が来るのだろうか…と。

その頃、サイとミリアリア、それにカズイは食堂で休んでいた。
「俺たち、もう軍人じゃないんだよね?」
カズイがサイに尋ねる。
「なんで?」
「だって軍から離れちゃったんでしょ?アークエンジェル。だったら…」
カズイはまた艦を降りることを考えているのだ。
サイは気持ちはわからなくはないけど…と思いつつ、 「敵前逃亡は軍法では重罪。時効なし」と、冷たく厳しい現実をつきつけた。
しかしカズイは諦めなかった。
「俺さ、実はこれ持ってるんだけどさ、前の除隊許可証」
サイはそれを見てうーんと首を傾げ、カズイは眼を輝かせている。
「これ見せたら、大丈夫なんじゃない?」
「気持ちはわかるんだけどね、カズイ…」
ミリアリアはそんなサイの優しさにくすりと笑い、立ち上がって厨房に食事のトレーを戻した。
「ごちそうさま」
その時、一つだけ残っているトレーに気がついて尋ねてみた。
「あの、これ、どうしてずっとここに置いてあるんですか?」
「え?ありゃ、捕虜の飯、頼むって置いといたのに」
ミリアリアは調理員が「全くもう、聞いてないんだから」と呟くのを聞きながら、(あいつの食事なんだ)とディアッカの事を思い浮かべた。
正直、戦闘でゴタゴタして、すっかり彼のことを忘れていた。
寒々しいあの地下牢で、あいつはまだ1人でいるんだろうか…そこまで考えると、ミリアリアは意を決したようにカウンターに身を乗り出した。
「私、持って行きましょうか?」
「本当かい?いやぁ、助かるよ」
調理員が礼を言い、下には連絡しておくからと言ってくれた。

一通り怪我人の搬送と収容が終わったので、カガリは衛生班に「後を頼む」と言い残して走り出した。
真っ白な軍服がいつの間にか血で汚れている事に気づき、(あーあ…こりゃまたマーナに叱られるな)と思う。
その途端角で出会い頭に人とぶつかりそうになり、慌てて相手の顔を見たカガリは叫んだ。
「あっ、おまえ!」
目の前にいたのは、今まさに探しに行こうとしていたキラだった。
「キラ!」
「…カガリ!?」
カガリはそのままキラの両腕を掴むと、「おまえ、どこも怪我してないのか?大丈夫なのか?」と言いながら、顔や体を見て心配そうに尋ねた。
キラはそんな彼を見て、ヘリオポリスで初めて会った時も、カガリが自分を案じ、どこか怪我をしていないかと聞いたことを思い出した。
「大丈夫だよ」
キラは元気に笑ってみせ、それからぎょっとして聞いた。
「カガリこそ、血だらけだよ?大丈夫?」
カガリはほっとして「よかったぁ」と満面の笑顔になり、「このバカ!」と怒鳴りながら、キラの小さな体を力強く抱き締めた。
大喜びのカガリにぐしゃぐしゃに振り回されて辟易しつつも、キラもまた自然笑顔になっていた。
「おまえ…おまえ、死んだと思ってたぞ!この野郎!」
「…ご、ごめん」
アークエンジェルから連絡が入ったぞとキサカに告げられた時、カガリの心配の種はようやく解消した。彼がさぞ心配しているだろうと気を回したマリューが、同時にキラの無事を知らせてくれていたからだ。
(よかった、ホントによかった、キラ!)
それでも、この眼で無事な姿を見るまでは信じられなかった。
キラはひとしきりカガリのかなり手荒な喜びをその身に受け、カガリがしてくれたように、カガリの背中をぽんぽんと叩いた。
「ほんとに…生きてるんだな?」
カガリは再びキラを離すと、真剣な顔で聞いた。
「生きてるよ。戻ってきたの」
それを聞いたカガリが心底呆れたように「戻ってきたの…じゃねーよ!」とすぱんとキラの頭を叩き、2人は明るく笑いあった。

「そっか。アスランに会ったんだ?」
カガリとキラは修理の始まったアークエンジェルを見ながら語り合った。
カガリはまた、キラが苦手なコーヒーを選んで飲んでいる。
「おまえを探しに行って見つけたのが、あいつだったんだ」
カガリはあの時の事を思い出してキラに語って聞かせた。
「メチャクチャ落ち込んでたぞ、あいつ。おまえを殺したって、泣いてた」
声すらあげずに…カガリは体を折り曲げて肩を震わせていた彼女を思い出した。
(あんなに苦しそうに…哀しいならわんわん泣けばいいものを…)
キラはそれを聞き、ほぅっとため息をついた。
「…あの時、私はアスランの仲間を殺したんだ」
アスランとの戦いを思い出すのは、まだとても苦しいことだった。
それに付随してトールの事を思い出すのも、やっぱり辛かった。
「…アスランは、トールを殺した」
「トール?」
その名を耳にしたカガリが思わず聞き返した。
「あいつ…逝ったのか」
俺たちがバナディーヤから戻ったら、キラの様子はどうだったかって、心配してたっけ…カガリはトールを思い出し、少し暗い表情になった。
(ちょっと口の悪いやつだったけど、明るくて、友達思いで…)
自身も乗ったスカイグラスパー2号機での彼の最期を聞き、カガリは胸を痛めた。
(一歩間違えば、死んだのは俺だったかもしれない)
戦争が続く限り、誰も理不尽な死からは開放されないのだ。
「どうしようもなかった。私も…きっとアスランも」
キラは俯き、カップを両手で握り締めた。
カガリはその手が震えていることに気づき、キラの傷が深いことを知る。
「今は、あんなの間違ってたってわかるよ。でも、あの時は…」
「敵同士だったんだもんな、おまえも、あいつも」
何気なく、ラクスと全く同じ事を言ったカガリに、キラは少し驚いた。
それから少し微笑んで、「そうだね」と頷いた。
「守りたいものが、あったんだろう?」
やがてカガリがポツリと聞いた。
「おまえを取り戻そうとして、あいつ、何度も説得したって言ってた」
キラは「うん」と答えた。
「アスランは攻撃より先に、いつも説得しようとしてくれた」
「でも、キラが聞かなかったって…戦い続けて、おまえもあいつの仲間を殺したって言ってたよ」
「私がやらなくちゃ、みんな死んじゃうと思ったから…」
寂しそうに答えたキラは、アスランもまた、苦しんでいたのだと痛いほど感じていた。
なのに、彼女の想いをどうしても受け入れることができないまま殺しあってしまった。
(皆を守らなきゃって…フレイとの約束を守らなくちゃって思ってた)
もう会えない赤毛の彼の姿を思い浮かべ、キラは少し哀しくなった。
「小さい頃からの友達だったんだろ?」
「アスランは昔からすごくしっかりしてて、私はいつも助けてもらってた」
(しっかりねぇ…)
カガリは気の抜けたようなアスランの様子を思い浮かべて苦笑した。
「キラが思ってるほど、あいつ、しっかりしてないかもしれないぞ」
「え?」
「強がって、意地っ張りなだけかも。着替え一つできなくてさ」
キラはそれを聞いて、怪訝そうに、「着替え?」と尋ねた。
ヤブヘビを突付いたカガリは、不信の眼を向けるキラに問い質され、その結果しなくてもいい言い訳をするはめになってしまった。

けれど、キラには心の底にもう一つ、隠している気持ちがあった。
カガリになら、それを言える。キラは改めてカガリに向き直った。
「カガリ」
「なんだよ」
着替えの件でずっと責められていたカガリは逆に、きょとんとした顔でキラを見た。
キラは少しためらってから、「ほんとはね…」と言った。
「ほんとのほんとは、私がアスランを殺したり、アスランが私を殺したりするなんてこと、絶対ないと思ってたのかもしれない…」
キラは相変わらず稚拙な表現で気持ちを吐露した。
「どこかで、『友達なんだから』って、甘えてた。お互いに本気でぶつかろうとはしなかったし、傷つけあわないように逃げてたんだ」
カガリは黙ったままキラの言葉を聞いていた。
「でも結局…一番悪い形でぶつかっちゃった」
カガリは、寂しそうに笑ったキラの頭にぽんと手を乗せた。
「あいつもきっと、そう思ってるよ」
カガリは憂いを秘めた寂しげなアスランの表情を思い浮かべた。
「大丈夫だ。おまえたちは、きっとまた話し合える時がくるよ」
「うん…そうだといいな…」
そう言ってもらえて嬉しそうなキラの顔を見ながら、カガリも優しく笑った。
(だからキラ…泣いていたあいつのためにも、生きていてくれて本当によかった)

ミリアリアはトレーを持ち、照明の落とされた牢の奥へ歩いて行った。
(平気…この間ほどは怖くない)
ディアッカはまた壁の方を向いて横になっていた。
「…食事よ」
その言葉にピクリと身を動かしたが、今回は本当に眠っていたらしく、起き上がってきても人影がミリアリアだとは気づかない様子だった。
「ゴタゴタしてたの。遅れてごめん」
「あぁ?」
声と姿でようやくあの時の少女だと気づいた彼は、思わず声を出した。 
見つめられたミリアリアはなんだか照れくさくて、つい声を堅くした。
「…なによ?」
「いやぁ、まさか、おまえが持ってくるとは思わなかったからさ」
それはディアッカの本当の気持ちだった。
彼女はあの後何も言わずに立ち去ってしまい、何日も経っている。
もう会えないだろうし、会ったところで…と諦めながら、それでももう一度会えないものか、と期待を抱いていたことも事実だった。
「おまえ?」
その呼び方にムッとしたミリアリアはつい言い返した。
「すいません!あ・な・た・さ・ま!」
ディアッカはおどけるように言い直した。
「…ミリアリアよ」
唐突な言葉に一瞬戸惑ったが、それが彼女の名前だと気づいたディアッカは、つい嬉しそうな声で聞き返した。
「へぇ…名前で呼んでいいのかよ?」
「いーや!」
ミリアリアはこのまま会話を続けるなんてバカみたい、と思い直した。
こいつはトールのことは殺してなかったけど、コーディネイターだし、バスターに乗ってたし…話をする義理なんかない、と無理やり思う。
「食事、持ってきてあげただけだから」
ミリアリアは「じゃあね」と言うと、元来た方へ歩き出した。
「あ!なあ、おい!」
「なによ!?」
帰ろうとするミリアリアをディアッカは慌てて呼び止めた。
「どうなってんだ、この艦?なんで俺は乗っけられたままなんだよ!?」
ディアッカは疑問に思っていたことをここぞとばかりにぶつけた。
「その上そのまま戦闘なんて、まともじゃないぜ」
捕虜は条約どおりならどこかの基地で降ろされ、収監されて当然だ。
「基地にいたのに降ろされなかったし、しかも戦闘に入ってたろう?」
ミリアリアはそれを聞き、(もし降ろされてたら、あんたは今頃サイクロプスで死んでたわよ!)と思いながら立ち止まった。
捕虜である彼の運命は今、自分ではどうしようもないところにある。
そう思うと、状況もわからない彼を無下にするのは可哀想だった。
「わかってるわよ。でもしょうがないじゃない」
「ここはどこだよ?俺はいつこっから出られるんだよ?」
捕虜にどこまで話していいのか、ミリアリアにはわからない。
けれどキラが言ったように、自分たちはもう地球軍じゃないなら、このディアッカというコーディネイターも捕虜とは言いがたい…
「オーブよ」
ミリアリアは今いる場所だけは言ってもいいだろうと判断した。
「オーブ!?」
ディアッカは驚いた。
「なんだよ、また戻ってきたってのか?」
(カーペンタリアには近くなったけど、何せここは『羊の皮をかぶった狼』だろ?むしろ状況は悪くなったんじゃねぇのか…)
ディアッカは恐る恐る、「降りられないのか?」ともう一度聞いてみる。
「私たちだって降りられないんだもん。あんたのことなんか知らないわよ」
「はぁ?」
ミリアリアは急に態度を変え、今度こそ立ち去ってしまった。
なんだよ急に…と思いつつ、一方で彼女が名前を教えてくれたことが嬉しくてならない。
「ミリアリア、ミリアリアか…可愛い名前じゃん」
冷めた食事を見て、あいつ、また来てくれないかな…と淡い期待を抱いた。

「サイクロプス?しかし、いくら敵の情報の漏洩があったとて、そのような策、常軌を逸しているとしか思えん」
ウズミはマリューたち士官を呼んで話を聞いていた。
オーブ側にはキサカとカガリを置いており、そのキサカが答えた。
「ですが、アラスカは確かにそれでザフト攻撃軍の8割の戦力を奪いました。立案者に都合がいい犠牲の上に。机の上の…冷たい計算ですが」
「それでこれか…」
ウズミは渋い顔で録画した映像を流して見せた。
「守備隊は最後の一兵まで勇敢に戦った!我々はこのJOSH-A崩壊の日を、大いなる悲しみと共に歴史に刻まねばならない。が、我らは決して屈しない。我々が生きる平和な大地を、安全な空を奪う権利は、一体コーディネイターのどこにあるというのか!この犠牲は大きい。が、我々はそれを乗り越え、立ち向かわなければならない!地球の安全と平和、そして未来を守る為に、今こそ力を結集させ、思い上がったコーディネイターらと戦うのだ!」
皆、この内容に唖然とした。
傷ついた子供たち、負傷した軍人、各地で起こる反コーディネイターデモ。
生き証人がいないと思って、好き勝手なことを言って煽っている。
こんなものが彼らの命を、あそこにいた何も知らない友軍を殺したのだ。
誰かの都合で「必要ない」と勝手に判断された人たちの命を奪ったのだ。
「わかっちゃいるけど、たまらんね」
フラガが不愉快そうにため息をついた。
「大西洋連邦は、中立の立場をとる国々へも一層強い圧力をかけてきている。連合軍として参戦せぬ場合は敵対国と見なすとまでな」
ウズミは映像を切らせると、厳しくなりつつある現状を伝えた。
「無論、我がオーブも例外ではない」
「奴らはオーブの力が欲しいのさ」
カガリが吐き捨てるように言った。
オーブの軍事力や技術力は、奴らには確かに魅力だろう。
「だがそれはオーブを守るための力だ。他国の争いに貸すものじゃない」
カガリはかつて説明したように、キラを見つめながら言った。
ウズミはカガリの言葉に頷き、そして続けた。
「ご存知のことと思うが、我が国はコーディネイターを拒否しない。オーブの理念と法を守る者ならば、誰でも入国、居住を許可する、数少ない国だ。遺伝子操作の是非の問題ではない」
オーブが世界に誇るのは中立よりもむしろ「何者をも拒絶・差別しない」ということにこそあるのだが、それは戦時下ではなかなか理解されない。
ウズミは、両者を分けるその思想こそが一層の軋轢を生むと信じていた。
「カガリがナチュラルなのも、キラくんがコーディネイターなのも、当の自分にはどうすることもできぬ、ただの事実でしかなかろう」
急に名前を呼ばれたので、キラもカガリも驚いて互いを見た。
そしてふふっと笑いあう姿を見て、ウズミは愛しげに眼を細めた。
「なのにコーディネイター全てをただ悪として、敵として攻撃させようとする連邦のやり方に、同調することはできん」
ウズミの言葉が豪奢な会議室に響き渡った。
「一体、誰と誰が、なんの為に戦っているのだ?」
ここにいる誰もがそんな疑問を抱いているゆえに、その言葉もまた、自身の思考への材料となっていく。ナチュラルが全て悪ではないように、敵とされるコーディネイターもまた、全てが悪であるはずがないのだと。

「しかし、おっしゃることはわかりますが…」
その時、腕組みを解いたフラガが発言した。
「失礼ですが、それはただの理想論に過ぎないのではありませんか?」
誰もが差別もなく、分け隔てもないのが理想とは思っていても、コーディネイターは能力の低いナチュラルを見下し、ナチュラルは全てに優れるコーディネイターを妬む…そして二分されていくのだ。
「それが現実です」
フラガが言うように、それが世界で実際に起きている「現実」だった。
いくら自分はコーディネイターを受け入れても、自分以外の人間が妬み、嫉み、積もり積もったそれによって悪質な嫌がらせや妨害を始めたら…
コーディネイターもまた、選民意識を持ってナチュラルを見下したら…
「そうなったら決して、争いはやまないでしょう」
誰もがキラのようではなく、誰もがカガリのようではない。
サイのように、コンプレックスを持ちながらも、それを昇華し、克服できる器や強さがあるわけでもない。
ウズミはその意見は尤もだと頷いた。
「わかっておる。無論我が国とて、全てが上手くいっているわけではない」
エリカ・シモンズのように、軋轢を避けるために、長いこと自分がコーディネイターであることを隠し通して生きてきた人物も多い…それほど両者の溝は深いのだ。
「が、だからと諦めては、やがて我らは本当にお互いを滅ぼし合うしかなくなるぞ。そうなってから悔やんだとて既に遅い。それともそれが世界と言うのならば、黙って従うか?抗うことなく、受け入れるか?」
ウズミは額にしわを寄せながら言った。
オーブにも問題は山積みだ。けれど教育、労働、メディア倫理…政府は打てる限りの手を打って両者を尊重しあうよう奨めている。
焼け石に水だとしても、何もしないよりはマシだと信じて。
「どの道を選ぶもきみたちの自由だ。その軍服を裏切れぬと言うなら、手も尽くそう」
アラスカの真実を知って以来、着ている軍服の意味を考え続けているマリューもフラガもノイマンも、その言葉に思わず背を伸ばした。
「きみらは、若く力もある。見極められよ。真に望む未来をな」
ウズミは未来を選ぶのは彼ら自身だと締めくくった。
「まだ時間はあろう」
退室するウズミに、皆は立ち上がって、敬礼ではなく礼をした。
その時キラは、カガリと共にいるウズミのもとへと向かった。
ウズミは少し驚いたようだったが、「どうした?」と優しく尋ねた。
「ウズミ様は、どう思ってらっしゃるんですか?」
キラは少し遠慮がちに切り出した。
「今のこの状況で、オーブが戦いに巻き込まれるような事があったら」
カガリははっとしてキラを見る。
彼らが懸念しているひとつの可能性…そして、限りなく必然性に近いそれを、見越しているようだったからだ。
ウズミはしばらく黙って彼女を見つめていたが、やがて言った。
「ただ剣を飾っておける状況ではなくなった…そう思っておる」
「もしそうなったら…私は…」
「今はよい」
ウズミは微笑みながらキラの言葉を遮った。
「よく考えることだ。だが、きみの気持ちは受け取ろう」
黙りこんだキラにカガリが笑いかけ、(ありがとう)と口が動いた。
肩を並べて歩いていく2人を見送りながら、キラは思っていた。
オーブという国を守るために剣を取る日が来るかもしれない…と。

「しかし、これだけの戦力でパナマを落とせだなどと…本国も無茶を言う」
ボズゴロフの艦長は渋い顔だ。
アラスカで投入した戦力をほとんど失い、ただでさえ隊員が少ないザフトの戦力はかなり減少してしまった。
「しかたありますまい」
立体の海図を眺めながら、クルーゼが答えた。
「アラスカで調子に乗った奴らの足下をすくっておかねば、議長もプラントも危ない。宇宙への門を閉ざし、奴らを地球に閉じこめる」
その為にも、パナマのマスドライバーは潰しておかなければならない。
臨時評議会では、「なぜ初めからパナマを狙わなかったのか」とザラの失策を追及する議員もいたが、なぜか次の会議には姿を見せなくなり、いつの間にか新たな評議員が補充されているという有様だった。
プラントはいまや、パトリック・ザラの独裁政治となりつつあった。 
「グングニールは?」
その名を聞いて、クルーゼはにやりと笑う。
「予定通りです」
あとは投下までに、目標地点を制圧できるかどうかが焦点だが、残った兵たちの士気は高く、むしろ以前より練度も増していた。
「アラスカの弔い合戦と皆、息巻いております」
同時に、クルーゼは仮面の下で思っていた。
(この作戦は必ずや成し遂げねはならんのだよ)
何しろザフトがこのまま弱くなりすぎてしまっては、力の拮抗が破れ、戦争というゲームが面白くなくなってしまうのだから…

クルーゼは艦長に後を頼み、しばしの休息を取ろうと部屋に戻った。
そこでは拘束もされていないフレイが、所在無く椅子に座っていた。
彼はクルーゼを見ると怯えたように身をすくませる。
「間もなく戦闘が始まるよ。見たいかね?」
クルーゼは面白そうに言ったが、フレイは答えない。
「あちらこちら引っ張り回してすまんね。が、命令なので仕方がない」
クルーゼはデスクの書類を片付けながら言う。
息を整えたフレイは思い切って聞いた。
「…あんた…なんで俺を…」
「きみは既に死んだ身だよ、フレイ・アルスター」
クルーゼは答えた。
「あの時私に撃たれていても、あのまま見逃していても、きみは死んでいた」
サイクロプスに飲まれ、死んだことに気づきもせずに爆発したろう… フレイはクルーゼに聞かされたアラスカの惨状を思って胸がムカついた。
「ここで逃げ出そうとしても、その直後にきみは死ぬ。兵に撃たれてね」
結局、何をしたって死ぬだけだとクルーゼは笑った。
この臆病者の小僧は、自分で命を絶つことすらできないだろう。
「ナチュラルとして、コーディネイターの中から、この泥沼のような戦争を見るのも悪くないと思うがね…なかなかどうして、滅多にできん経験だよ?」
クルーゼはニヤリと笑い、フレイはその口調の冷たさにぞっとした。
そしてクルーゼは、用意させたザフトの緑服に着替えるよう命じ、抵抗する権利などないフレイは、着慣れないその制服を身に着けた。
それからクルーゼは彼をブリッジに連れてくると、空いた椅子に座らせた。
モニターをつけると、電波状況が悪いながらも戦場が映し出される。
密林の中を、ヘリが何機も飛んでおり、それをジンが撃ち、空からディンが舞い降りては銃座を攻撃した。戦車とバクゥが激突する。
「戦場では命など安いものだ。一瞬で失われる」
クルーゼが、その状況に釘付けになっているフレイの耳元で囁いた。
ヘリがカメラの傍で爆発し、光と飛んできた破片にフレイが思わず身を引く。
「ひ…!」
「だが皆、母国の為、大義の為、戦うのだ」
コーディネイターも、ナチュラルも、そのためだけに死んでいく…血まみれの兵士がジンに踏み潰され、ザウートに狙われた戦車からわらわらと兵が逃げ出したが、近くで爆発が起きて木っ端微塵になった。
「しかしきみには似合わんな。そんなことは」
フレイは凄惨な戦場を見て気分が悪くなり、手で口を押さえた。
「軍服は着ていてもきみは兵士ではない。違うかね?」
クルーゼはそう言うと、フレイの肩をぽんと叩いた。
「よく見ておきたまえ、フレイ・アルスター。戦争というものがどんなものなのかをな」

「なんですって!?パナマが!」
アークエンジェルのブリッジでも、マリューが報せをもたらしたキサカに聞き返していた。
「未明から攻撃を受けている。詳細はまだわからんが」
「マスドライバーか?」
フラガが直感を口に出すと、キサカが頷いた。
「あれを封じ込めるのが元々ザフトの狙いだからな」
キサカが「データを置いていこう」とタブレットを操作した。
「地球軍の主力隊も今はパナマだ。ザフトも必死さ。きみらには、複雑だな」
ナタル…マリューは艦を去った彼女の顔を思い浮かべた。
同じ頃休憩室にいたサイも、通りかかったノイマンに尋ねた。
「パナマが攻撃されてるって、ほんとですか?」
「ああ、らしいな」
彼らの会話を傍で聞いていたミリアリアは目を伏せる。
「アラスカで…人がたくさん死んだばかりなのに」

「こちら第3中隊。救援を!救援を!うわぁ!」
密林の中の中継基地はジンに狙われ壊滅状態だった。
「やってやる!やってやるさ!この宇宙の化けものめ!」
空しく機銃を撃ち続けていた兵たちは、ディンのライフルで全滅する。
ゾノが海から離れてのそのそと移動し、クローで戦車に組みついた。
バクゥやディンなど、大気圏内用機体の多くがアラスカに投入されて破壊されたため、パナマには本来は宇宙用の機体であるジンやシグーが大量に投下された。本国から送られてきた数は、地球軍本部を狙うにはあまりにも心細く、頼りないものだったが、クルーゼの言うように、弔い合戦のつもりの彼らは、実に士気が高く、勇猛果敢に戦った。
「敵モビルスーツ部隊、第2防衛ラインへ到達!」
「第3中隊!第3中隊!どうした!?応答せよ!」
本部のオペレーターは既に全滅した中隊に呼びかけ続けた。
「第8防空隊は南側へ!急げ!」
ディンが少ない方面には戦闘ヘリと戦闘機を投入する。
しかしNジャマーの影響でレーダーもレーザーも意味を成さない今、深い密林が逆にモビルスーツの姿を隠してしまう…
数では勝りながらも、まるでこの戦争が始まった頃のようなザフトの勇敢な戦いぶりに業を煮やした司令官は、ある部隊の出撃を命じた。
「第13独立部隊を展開しろ!」
「よろしいのですか?」
あれはまだ…という副官の言葉に、司令官は怒鳴る。
「何のために作ったモビルスーツ部隊だ!奴らに我々の底力を見せてくれるわ!」

「グングニール、投下されました」
クルーゼが情報をリアルタイムでイザークたちに伝えるよう指示をする。
(グング…ニール?)
ブリッジのフレイは、その恐ろしげな名前にゾクリとした。
密林には爆発による火災がいくつも起きており、生命を焼き尽くしていた。

「ふん!叩き甲斐のない」
ヘリを撃ち落としたジンが、密林の奥から敵の出現を感知した。
熱紋はライブラリにはないが、モビルスーツのようだ。
「あれは!?」
「ストライクとかいう地球軍のモビルスーツか?」
ジンのパイロットが、ぞろぞろと出てきた白いモビルスーツを見て驚愕する。
地球軍唯一にして、最強のモビルスーツ。
彼らは噂に聞くストライクに似たそれを見て戸惑いを隠せない。
「それがあれなのか?」
「あんなに大量に?」
「いや、違う!」
その時、ストライクを最もよく知る男が後ろから叫んだ。
「あれはストライクじゃない。地球軍の量産型だ!」
イザークが正体不明の敵にひるんだ兵たちを「恐るるに足らん」と鼓舞した。
「だが心してかかれよ!」
イザークは兵たちに散開を命じ、コピー部隊の1機に向かって行った。

「ほぉ、地球軍のモビルスーツ部隊」
クルーゼが面白そうに言う。
(似てる…ストライクに…)
フレイはキラが乗っていたストライクに似たそれを見て驚いた。
「フォスター隊の前面に展開された」
「ふっ…かえってありがたいですな」
艦長の言葉に、クルーゼは余裕の笑みを浮かべた。
「EMP対策が施してあるといっても、程度はしれたものですから…」

―― 虎の子のモビルスーツ、共にグングニールの餌食にして差し上げよう。

実戦投入されたストライクダガーはビーム兵器を装備しており、PS装甲こそないものの、攻撃力はジンやシグーを上回った。
その動きもコーディネイターに劣らぬほどの機敏さと反応を見せ、モビルスーツ戦に慣れていないジンのパイロットたちを混乱させた。
模擬戦は行っても、何しろ彼らとて実戦でモビルスーツと戦うのは初めてなのだ。
「舐めるなぁ!」
イザークはといえば、外見こそストライクに似てはいるが、その動き、戦い方とも比較にもならないダガーにサーベルで斬りかかり、ライフルやシヴァを駆使して撃退した。そしてチラリと時計を見る。じきに作戦開始だった。
別働隊のジンは、投下されたグングニールにたどり着いていた。
そしてパネルをあけると、マニピュレーターで器用にボタンを押す。
「よし、キャニスター12番装着完了!たっぷり喰らえ、ナチュラル共!」
その途端、グングニールが発動し、全ての電子機器に異常が発生する。
想像もできない強烈な電磁波があたり一面を襲ったのだ。
「機体が!」
「動かない…!動きません!隊長!」
ジンに対して優勢な戦いを繰り広げていたストライクダガーが、全ての計器を狂わされ、機能しなくなって停止した。
基地のほとんどの電子機器も強力な電磁波により使用不能になる。
非常バッテリーの光だけが輝く司令室は、室内の電源が切れ、コンピューター、モニター、電気、全てが使用不能になった。
人には何の危害も与えず、電子機器だけが停止してしまったのだ。
何より驚いたことに、磁力と電力を利用していたマスドライバーが、この異常な電磁波を受けて分解され、あっけなく崩壊したのである。
火薬も爆弾も使うことなく、まさに最小限の力で最大限の効果をあげたのだ。
ザフトの全モビルスーツには、この強力な電磁波の影響を一切受けないよう、EMP対策が完璧に施されていた。従って電磁場においても稼動に問題はない。 
既に雌雄は決し、あとは動けないモビルスーツや何もできない地球軍兵士に投降を呼びかけ、捕虜にする仕事が残るばかりだ。

しかし、ここからが後々まで残る「ザフト最大の汚点」の始まりであった。
この時、ザフトのほとんどの兵士が加わったとされる捕虜虐殺。
投降し、手を上げる者たちに対して、本来規律正しく紳士的とされてきたザフト兵士たちが、容赦ない虐殺行為を行ったのである。
「はっはっはっは。いいザマだな、ナチュラルのおもちゃども」
「アラスカでやられた、ハンナの仇だ!」
ある者はダガーを鉄の棺桶としてそのまま破壊し、ある者は中の兵士が逃げられないようにした戦車を、そのまま踏みつぶした。
「ナチュラルの捕虜なんかいるかよ!」
中継基地から投降した兵を、モビルスーツのライフルで射殺した者もいる。
密林はまたたく間に阿鼻叫喚の地獄と化した。

イザークは、赤服の義務としてこの軍規違反を止めようとした。
しかしデュエルの威力を知る周囲の連中をおとなしくさせることができても、密林に散らばった者全てを止めることは、いかな彼でもできよう筈がない。
「動けない敵を討って…何が面白い」
イザークは密林に響く銃声を聞きながら、自身が犯した罪を思い出す。
かつて月の第八艦隊との戦いにおいて、腹いせに脱出用シャトルを撃った。
(俺も同じだ…もう戦うことすらできない、逃げていく兵たちを撃った)
密林の向こうで逃げ惑う敗残兵に乱射を続けているジンを見つけたイザークは、その足元に正確な威嚇狙撃を行った。驚いたジンは怒りにまかせて振り返ったが、相手がデュエルと気づくと慌てて銃を下ろした。
(それだけではない…殺したナチュラルの家族は全て俺を恨むだろう)
イザークもまた、戦場の矛盾と負の連鎖に思いを馳せ始めていた。

クルーゼは作戦の成功を艦長と喜び合い、フレイを連れて部屋に戻った。
フレイは戦場の惨状にすっかり参り、勝手にベッドにもぐりこんだ。
クルーゼはそれを見て鼻で笑うと、今回の作戦の報告書をまとめ始めた。
「さて、新たな舞台の幕開けとなるか」
地球軍はマスドライバーを求めてビクトリアへ向かうか、それとも…

キラは、キサカが伝えたパナマ陥落のデータに目を通していた。
ザフトの新兵器、グングニールによるマスドライバーの破壊…食い入るようにデータを見ているキラに、フラガが声をかけた。
「おまえは、1人でも戦う気か?」
キラははっと気づいて顔を上げる。
そして、「戦いたいわけじゃないですよ」と笑った。
「できることと、望むことをするだけです。このままじゃ嫌だし、私自身、それで済むと思ってないから」
そんなキラを見て、フラガはやっぱり変わったなと思う。
そこにカガリが飛び込んできた。
「キラ!エリカ・シモンズが来て欲しいってさ。なんか、見せたいものがあるって」

「戻られたのなら、お返しした方がいいと思って」
キラたちはシモンズのラボにやって来ていた。
「…ストライク」
そこで皆が目にしたのは、綺麗に直されたストライクだった。
「回収の際に、あなたのOSを載せてあるけど、その…」
キラは懐かしそうにストライクを眺めている。
アスランに傷つけられたコックピットのハッチも、イージスの自爆でボロボロになった外装も、何もなかったかのように修理されていた。
「今度は別のパイロットが乗るのかなぁと思ったもんだから」
シモンズが遠慮がちに「キラが死んだと思って」いた事を告白した。
「例の、ナチュラル用の?」
フラガが聞いた。
キラが作ったOSの効力はM1で実証済みだ。
「俺が乗る!」
すると、カガリが勢いよく手を挙げた。
その元気のいい返事に、キラはもちろん、マリューまでが「ええ?」と見る。
「あー、もちろんそっちがいいんならの話だけど…」
手を挙げてしまってから、カガリが一応遠慮すると、フラガが一喝した。
「ダメだ!」
「なんでだよ!?」
遠慮したくせに抗議するカガリに、フラガはニッと笑った。
「俺が乗る」
「ええ~!?」
これは元々アークエンジェルのだろとフラガは譲らない。
マリューは心配そうに「少佐…」と言ったが、それを聞いたフラガがあれ?という顔をする。
「…じゃないんじゃない?もう。マリューさん?」

さっそくキラがストライクのOS調整を行い、フラガは意気揚々と乗り込んだ。
うまく扱えるようになるには、実戦あるのみ!最もいい特訓方法は、「強い奴と戦う」ことなのだという。
「シミュレーターなんざダメだダメだ!」
「だからって…」
キラはビームの出ない模擬剣を持って言った。
「いきなり私と模擬戦は、いくらなんでも早すぎると思いますけど?」
「うるせー!生意気言うんじゃないよ!いくぞ!」
ストライクはフリーダムに向かい、キラはかつての愛機の攻撃を受け止めた。

遅ればせながらスピットブレイクが成功し、ザフトは気勢を上げた。
再びアドバンテージがなくなった地球軍の水面下の動きは怪しげで、その魔の手はウズミたちが懸念するようにオーブへと迫りつつあった。
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制作裏話-PHASE37-
SEEDも終盤に入り、物語が再びオーブに戻ってきました。
アラスカでボロ負けしたザフトが、パナマで借りを返す話です。
ガンダム戦争に興味のない女子は、このへんの話はちゃんと理解できてるんでしょうかね?

でも相変わらず戦ってるのはイザークだけで、アスランは欠片も出てこないし、ディアッカは吊り橋効果とストックホルム症候群でラブコメやってるし、キラはカガリと仲良しだし、フレイとクルーゼも怪しいです。孤独だ、王子。でもジンを威嚇狙撃とか格好よく書いたよ、王子!

本編ではひたすらキラを探して走り、見つけたら抱きついて押し倒したカガリですが、逆種のカガリにはちゃんと司令官として現場で仕事をさせています。医療技術者という設定がこういうところでも結構生きたので、本編のカガリも本当に資格を持ってたらよかったのにとつくづく思います。

アスランと会った事を語り合うのは本編どおりですが、改変したのはカガリがトールの死を悼むシーンですね。種で不満や批判があるのは、死んだキャラを大事にしてるんだかしてないんだかわからないところです。カガリはトールと会ってるんだし、仲間とは別に、こういう追悼シーンがあってもいいと思います。

あと、カガリがラクスと同じことを言ってキラを驚かせるのも気に入ってます。今はまだ互いを知らないけれど、いずれ指導者として最大のライバル、そして最良の友となる2人の目線が同じところにあるという演出です。

カガリが、アスランが声を出さずに辛そうに泣いていたと心を痛めるシーンは、最終回でアスランがカガリの胸で声をあげて大泣きする伏線です。アスランが心を解き放って大声で泣ける相手は、カガリだけだという事ですね(本編でもそうだったはずなのに、DESTINYではすっかり忘れ去ってやがったなぁ、アスラン…)

大幅な改編は、クルーゼがフレイに無理やり戦場の残酷さを見せるという部分。本編ではサイ同様、拉致られてからは制作陣も使いあぐね、すっかり空気と化してしまったフレイですが、逆種ではフレイには両者の対立をきちんと見据えてもらわねばならないので、早々と活躍してもらいました。

これまでのプラント、地球連合に加え、蚊帳の外にいた平和なオーブにも魔の手が迫ってきます。
新型の登場やキラとアスランの和解、ディアッカの寝返りにガンダムのラブラブ逃避行やウズミの自爆と、本編でも全面的にテンションが高まったあたりですし、逆転ならではのアレンジも随分必要でした。

けれどそれ以上に思うのは、今はもうとにかく「オーブ戦がシン・アスカを生み出した」と知っていることです。なので私も「今、ここにシンがいる。シンが戦争を見つめている」と意識しながら書いていました。

逆種が終わってもまだ逆デスがある…でも難しい、どうしようと葛藤しつつ、心の奥底ではシンを意識せずにはいられませんでしたね。そういう意味では、シンもやはりまごう事なき主人公なんだなぁと思います。
になにな(筆者) 2011/03/28(Mon)11:04:01 編集



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