Natural or Cordinater?
サブタイトル
お知らせ PHASE0 はじめに PHASE1-1 偽りの平和① PHASE1-2 偽りの平和② PHASE1-3 偽りの平和③ PHASE2 その名はガンダム PHASE3 崩壊の大地 PHASE4 サイレント ラン PHASE5 フェイズシフトダウン PHASE6 消えるガンダム PHASE7 宇宙の傷跡 PHASE8 敵軍の英雄 (原題:敵軍の歌姫) PHASE9 消えていく光 PHASE10 分かたれた道 PHASE11 目覚める刃 PHASE12 フレイの選択 PHASE13 宇宙に降る星 PHASE14 果てし無き時の中で PHASE15 それぞれの孤独 PHASE16 燃える砂塵 PHASE17 カガリ再び PHASE18 ペイバック PHASE19 宿敵の牙 PHASE20 おだやかな日に PHASE21 砂塵の果て PHASE22 紅に染まる海 PHASE23 運命の出会い PHASE24 二人だけの戦争 PHASE25 平和の国へ PHASE26 モーメント PHASE27 果てなき輪舞 PHASE28 キラ PHASE29 さだめの楔 PHASE30 閃光の刻 PHASE31 慟哭の空 PHASE32 約束の地に PHASE33 闇の胎動 PHASE34 まなざしの先 PHASE35 舞い降りる剣 PHASE36 正義の名のもとに PHASE37 神のいかずち PHASE38 決意の砲火 PHASE39 アスラン PHASE40 暁の宇宙へ PHASE41 ゆれる世界 PHASE42 ラクス出撃 PHASE43 立ちはだかるもの PHASE44 螺旋の邂逅 PHASE45 開く扉 PHASE46 たましいの場所 PHASE47-1 悪夢はふたたび① PHASE47-2 悪夢はふたたび② PHASE48-1 怒りの日① PHASE48-2 怒りの日② PHASE49-1 終末の光① PHASE49-2 終末の光② PHASE50-1 終わらない明日へ① PHASE50-2 終わらない明日へ②
制作裏話
逆転SEEDの制作裏話を公開
制作裏話-はじめに- 制作裏話-PHASE1①- 制作裏話-PHASE1②- 制作裏話-PHASE1③- 制作裏話-PHASE2- 制作裏話-PHASE3- 制作裏話-PHASE4- 制作裏話-PHASE5- 制作裏話-PHASE6- 制作裏話-PHASE7- 制作裏話-PHASE8- 制作裏話-PHASE9- 制作裏話-PHASE10- 制作裏話-PHASE11- 制作裏話-PHASE12- 制作裏話-PHASE13- 制作裏話-PHASE14- 制作裏話-PHASE15- 制作裏話-PHASE16- 制作裏話-PHASE17- 制作裏話-PHASE18- 制作裏話-PHASE19- 制作裏話-PHASE20- 制作裏話-PHASE21- 制作裏話-PHASE22- 制作裏話-PHASE23- 制作裏話-PHASE24- 制作裏話-PHASE25- 制作裏話-PHASE26- 制作裏話-PHASE27- 制作裏話-PHASE28- 制作裏話-PHASE29- 制作裏話-PHASE30- 制作裏話-PHASE31- 制作裏話-PHASE32- 制作裏話-PHASE33- 制作裏話-PHASE34- 制作裏話-PHASE35- 制作裏話-PHASE36- 制作裏話-PHASE37- 制作裏話-PHASE38- 制作裏話-PHASE39- 制作裏話-PHASE40- 制作裏話-PHASE41- 制作裏話-PHASE42- 制作裏話-PHASE43- 制作裏話-PHASE44- 制作裏話-PHASE45- 制作裏話-PHASE46- 制作裏話-PHASE47①- 制作裏話-PHASE47②- 制作裏話-PHASE48①- 制作裏話-PHASE48②- 制作裏話-PHASE49①- 制作裏話-PHASE49②- 制作裏話-PHASE50①- 制作裏話-PHASE50②-
2011/2/28~2011/5/17
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機動戦士ガンダムSEED 男女逆転物語
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工作員は4人に偽のIDを渡して説明した。
正直、情報部からあのクルーゼ隊のメンツを潜入させろと言われたのは大迷惑だ。地球軍への軍事協力が、ウズミ・ナラ・アスハを中心に一枚岩だと信じられていたオーブ首脳陣に内部抗争があると暴き、見た目こそ穏やかだが、オーブは今、混乱と疑心の真っ只中だ。
工作員にとってはこの一番厄介で危険な時に、潜入者など…
「無茶はしてくれるなよ。騒ぎはごめんだ。獅子は眠らせておきたいんでね…」
アスランは無言で頷く。
作業服に着替えた4人は二手に分かれ、オーブへの潜入を開始した。
「第6作業班は、13番デッキより作業を開始してください」
アークエンジェルにはモルゲンレーテの作業着を着た技師たちが群がり、あちこちで火花が散ったり重機が音を立てたりして、ドックはそれこそ戦争のような騒がしさだった。
航行中は満足のいく機材も十分なマテリアルもない中で、ただあるもので必死に整備を続けてきたマードック率いる整備兵たちも、彼らモルゲンレーテと同じ作業着を支給され、優れた機器や豊かな補給品に、嬉々として作業を進めている。
休んでいいと言っているのだが、この立派なドックを見ては整備兵の血が騒ぐのか、ゆっくり休んでいる者などいない。
「機関区、及び外装修理班は、第7ブースで待機」
ナタルは忙しそうに走り回る彼らを見て、やれやれと思う。
「すごいですね、オーブは…」
無尽蔵のように出てくる作業を行う人間や、惜しげもなく供給される修理材料に、ノイマンもはぁ、と感心している。
「驚きました。もう作業にかかってくれるとは」
目の前でウィンチが回り、巨大なクレーンが起き上がっていく。
(あそこはバスターに撃たれた箇所…あっちは恐らくブリッツ…よくもまぁあの状況で堕ちずに航行できたものだ)
ノイマンは必死で舵を取り続けたせいで、今もまだ筋肉痛が残る腕をさすった。
「ああ。それは本当にありがたいと思うが」
ナタルは答える。この代償は戦闘データとヤマトの能力だ。
即ち、オーブにとってはこれだけの事をさせる価値があるのだ。
行くぞ、とナタルはノイマンに声をかけ、ノイマンも後に続く。
戦闘がない今のうちに、内部システムを洗い直したかった。
オーブを出れば、必ずやまた戦闘になるだろうから…
「おはよう」
晴れやかな顔でマリューがブリッジにやってきた。
パル、ナタル、ノイマンがそれぞれの持ち場から挨拶をする。
ナタルは技師たちの名簿をマリューに渡し、既に修理作業に取り掛かっている旨を報告した。
マリューはレポートボードにざっと目を通すと頷いた。
「ヤマト少尉は?」
「先刻、迎えと共にストライクで工場の方へ」
モルゲンレーテからやってきた技師たちは、あのストライクのパイロットである小さな少女の姿を見て一瞬驚いたようだったが、挨拶をし、さほど遠くはない工場までストライクで移動してきてくださいと要請した。
「あちらではエリカ・シモンズ技術主任がお待ちしておりますので、詳しくはそちらでご説明します」
「了解した」
ナタルは彼らのIDを確認し、それからヤマトの出発を許可したのだった。
「そう。ありがと」
ナタルは、出発前になぜか振り返ったキラの顔を思い浮かべた。
そんな、売られていく子馬みたいな顔をしなさんな…フラガ少佐ならそうやってからかいそうな、心細そうな顔を。
モビルスーツに乗れば無双の強さを誇るくせに、あれはまだほんの少女なのだ。
「ん?なに?」
珍しくぼんやりしているナタルに、マリューは優しく声をかけた。
「いえ…」
ナタルは慌てて制帽を直す振りをした。
「ではこの際に、内部システムの点検修理を徹底して行いたいと思っておりますので」
ナタルはノイマンの元へ向かう。
マリューはナタルの様子を不思議に思いつつ、「お願いね」と声をかけた。
広大なモルゲンレーテの敷地を誘導されながら、キラはストライクで歩いて移動した。工場内には高いフェンスが張り巡らされ、監視塔があちこちにあって、なんだかまるで軍の基地みたいだ、と思う。
マリューとフラガに呼び出され、モルゲンレーテでストライクの戦闘データの抽出と、技術協力をして欲しいと頼まれたのは昨日の夜だった。「なぜです?」キラは怪訝そうに尋ねた。
「…艦長はヘリオポリスで言ったじゃないですか。軍の機密を見た私たちを帰すわけにいかないって。私たちは艦長に銃を向けられて、仕方なくアークエンジェルに乗ったんですよね?」
「ええ、それは…」
「そんな大事な技術やデータを、なんで…」
フラガがそんな不服そうに抗議するキラを見て、「ちゃんと話してやりなよ」とマリューを促した。
マリューは少しためらった後、それがオーブから示されたアークエンジェルを修理する「条件」なのだと説明した。
「オーブは軍事技術の向上を望んでおり、そのためにあなたの力が必要なの」
(オーブって、戦わない国じゃないんだ)
キラは腑に落ちないながらもマリューの言葉を渋々承諾し、今こうして彼らの誘導に従っている。
やがて誘導していた車が止まり、技師が出てきて合図をする。
そこにはドックがあり、その奥にエリカ・シモンズのラボがあった。
「…推測の域を出ず、専門外のことでもあるが、以前一度だけ学会誌に発表されて論議を呼んだ、Superior Evolutionary Element Destined-factorを想起されたい…」
エリカ・シモンズはストライク、アークエンジェルの戦闘データを音声ファイルに整理していた。くわえてレドニル・キサカ一佐による報告書を補足資料として読み漁る。
キラ・ヤマトという人となり…彼女がいたいけな少女でありながら、数々の戦闘では男顔負けの常人離れした能力で戦い、しかも勝利してきたという事実…我々コーディネイターの中においても、突出した存在。
学会に発表したのは確か、コーディネイターの若き遺伝子学者だ。
彼の名は…なんといったか。頭文字がDだった気もするが、思い出せない。
あの論文をもう一度探し、遺伝子学に詳しい医師に彼女を徹底的に調べさせて…
エリカ・シモンズはそこまで考えてはたと思考を停止した。
目の前には夫と息子のリュウタの写真が飾ってある。
それを見て、いけないいけない…と頭を振る。
(わずか16歳の女の子に、私は何をさせようっていうの)
やがてインタホンが鳴り、シモンズは返事をした。
「シモンズ主任。キラ・ヤマト少尉をご案内いたしました」
「ありがと。すぐ行くわ」
(ただでさえ、これからその能力を見せてもらうっていうのにね)
「こんにちは、キラ・ヤマト少尉」
キラは挨拶をする相手が思った以上に若くて美しい人だったので驚いた。
「…安心して。私もコーディネイターよ」
ウィンクした彼女がそう言って微笑むと、ラボを案内してくれた。
「ここって…」
今アークエンジェルが収容されているドックほどは規模は大きくないが、キラがシモンズの後について見て回っているラボも、なかなかの設備が揃っていた。
「ここならストライクの完璧な修理ができるわよ」
いわば、お母さんの実家みたいなもんだから…とシモンズは笑う。
「こっち!あなたに見てもらいたいのは」
かつてカガリに、そっちじゃない、こっちだと怒られながらバナディーヤを歩いた時のように、キラは好奇心と驚きできょろきょろしてしまう。やがてシモンズに追いつくと、シモンズがライトをつけた。
「あっ!これ…」
そこにあったのはモビルスーツだった。
キラはストライクのフレームによく似ていながらも、ところどころ違っているそのモビルスーツに驚いて言葉が続かない。
(オーブは…これを造るために地球軍に協力してガンダムを作った…?)
「そう驚くこともないでしょ?あなたもヘリオポリスでストライクを見たんだから」
キラの心を読んだようにシモンズが言う。
キラは黙ってそれを見上げていた。
(これ、ナチュラルでも操縦できるのかな?OSは何を載せてるんだろう?)
哀しいかな、すっかりベテランパイロットのような事を考えている自分にキラは気づかないまま、それらをまじまじと見詰めていた。
「これが、中立国オーブという国の本当の姿だ」
その時、モビルスーツを見上げるキラの後ろから聞き覚えのある声がした。
「カガリ!」
キラの表情がパッと明るくなる。
カガリはブスッとしながら頬を手で押さえ、キラに目で挨拶をした。
最後にアークエンジェルで見送ったスーツ姿の彼は、何だか今までのカガリではないような気がしたが、今はいつもの半袖のシャツとカーゴパンツ、そして愛用のデザードブーツを履いた、キラのよく知る彼がそこにいた。
「これはM1アストレイ。モルゲンレーテ社製のオーブ軍の機体よ」
シモンズは可愛い我が子を自慢するように微笑みながら、量産タイプとしてようやくここまでこぎつけたの、と説明した。
「ただ、フェイズシフトはないんだけどね」
そういえばと、キラはこの機体がディアクティブモード特有のグレイではないことに気づいた。だけど…と一つの疑問が浮かぶ。
「これを、オーブはどうするつもりなんですか?」
思いもかけない質問に、シモンズはえ?という顔をしてキラを見た。
「どう…って?」
シモンズは質問の意味を理解しあぐね、続けてカガリを見る。
「これは、オーブの『守り』だ」
カガリはキラの隣に立つと、M1を見上げながら言った。
「オーブは他国を侵略しない。他国の侵略を許さない。そして、他国の争いに介入しない。その意志を貫く為の力だ」
ああ…キラは認識を新たにした。
それを貫くためには、力がいるということなのだろう。
これだけの軍事工場を持っていて、あれだけの艦隊を率いて…
(想いだけでは、何も守れない。中立を守るためには、「非戦」ではいられないんだ)
矛盾をはらみながらも、オーブは国と理念を守るため、力を持たなければならないということなのだろう…
「オーブはそういう国だ」
ふと、カガリの表情が緩む。
「いや、そういう国のはずだった。親父が裏切るまではな」
カガリは苦々しく言う。
ウズミは、M1を整備するために地球軍に協力するふりをして技術を盗んだ。
それを知れば、プラントは騙されたと考え、地球軍は「盗人」とオーブを責めるだろう。
―― だまし討ちみたいで、卑怯だわ!
苦い思いで思い出したのは、あの美しい女兵士の怒りに満ちた瞳だった。
(くそっ…こんなんじゃ、あいつに言い返せやしない)
キラは怖い顔をしてM1を睨みつけるカガリを見つめていた。
(そうか、お父さんが裏切り者って、それで…)
「あ~ら、ま~だおっしゃってるんですか?そうではないと何度も申し上げたでしょ?」
そんなカガリに、シモンズが呆れたように言う。
「ヘリオポリスが地球軍のモビルスーツ開発に手を貸してたなんてこと、ウズミ様は御存知…」
「黙れ!」
カガリがシモンズの言葉を遮って怒鳴ったのでキラはビクッとする。
キラの驚いた表情を見て、カガリは少し声のトーンを落とした。
「そんな言い訳が通ると思うのか?国の最高責任者が知りませんでしたなんて、それも罪だ!」
大体、あのサハクやそれに乗ったセイランの動きを読めなかった政府にも非はある。
「だから、責任はお取りになったじゃありませんか」
ウズミは混乱を収めるべく代表を辞し、一首長へと戻ったのだ。
「なーにが」
カガリはパタパタと手を振った。
「職を伯父上に譲ったところで、常にああだこうだと口を出して、結局何も変わってないじゃないか」
「仕方ありません」
シモンズは「絶対まだ自分が代表のつもりだ」と父をなじるカガリに、呆れながらも穏やかに言った。
「ウズミ様は、今のオーブには必要な方なんですから」
「卑怯者だがな!」
カガリのさもバカにしたような言葉に、シモンズもついに「カガリ様!」とたしなめる。
「まったく…」
そう言いながらシモンズはキラを見て笑った。
「あれほど可愛がってらした若様がこれでは、ウズミ様も報われませんわね」
キラはなんとなくわかる気がした。カガリは、お父さんが大好きなんだろうと。だからこその怒りなのだろう。
「おまけに昨日のあの騒ぎでは、確かにほっぺの一つも叩かれますわ」
「え?」
キラはそう言われてもう一度カガリをまじまじと見た。
「叩いたなんて生易しいもんじゃないぞ!グーだ、グー!」
見ろ、とカガリはキラに腫れあがった左頬を見せた。
「容赦ないんだ、あいつ…」
カガリはブツブツ言いながら痛そうに頬を抑えた。
キラは何だか可笑しくてくすくすと笑ってしまったが、カガリは「笑うな!」とキラの頭を突つく。
シモンズはそんな風に仲のよい2人を微笑ましく見ていたが、「さ、こんなおバカさんは放っといて、来て!」とキラを促し、2人はじゃれあいながら彼女の後を追った。
「アサギ、ジュリ、マユラ!」
シモンズが呼びかけると、「はーい」と女の子たちの声がする。
強化ガラスの向こう側にはM1が3機、ぎこちなく動いていた。
キラは「一体これは?」と、カガリとシモンズを見た。
「あ!カガリ様?」
スピーカーからはさらに別の女の子の声が聞こえてくる。
(オーブのパイロットも女の子なんだ…ナチュラル?コーディネイター?)
キラがそんな事を考えていると、1機のモビルスーツがよたよたと歩み寄って管制室を覗き込んだ。
「あら、ほんと」
別の声が笑う。
「なーに、もう帰ってきたの?」
「早かったのね。もっとかかると思ってたのに」
「で?世界を見る旅とやらは終わったの?」
くすくす笑いながら彼女たちは次々と尋ねた。
「悪かったな」
カガリは容赦のない彼女たちの言葉にブスッとふくれた。
ひとしきり会話した後、シモンズが「さ、始めて」と言うと、3人ははいと返事をした。
(はい、はいいけど…何やってるんだろう…)
キラはポカンとして見ていた。
(めちゃくちゃぎくしゃくした動き…人間で言えば、右手と右足が同時に出ているような、関節が硬くてどんな動作をするにも一呼吸置く高齢者みたいな…なんというか…)
キラが思わずカガリを見ると、カガリも「何も言うな」という顔でキラを見る。
「言いたい事はわかってるよ。おまえから見たら驚きだろうな」
それからカガリは腕組みをしてシモンズに言った。
「相変わらずだな…俺が出かける前と何にも変わっちゃいないじゃないか」
「でも、倍近く速くなったんです」
シモンズは困ったように答えた。
「ソフトを改良して、サスペンションも上げましたし…」
カガリはため息と共に、彼女たちの操縦をまじまじと見ているキラをチラリと窺った。
(キラの戦いぶりを初めて見た時、モビルスーツとはこんなにも人のように自由に動けるものかと思った。時には美しいとさえ思うほど…それに比べて…)
「あーあ」とカガリは腕を頭に載せた。
「これじゃ、あっという間にやられるぞ。何の役にも立ちゃしない、ただの的じゃないか」
キラは答える代わりにうーんと首を傾げた。
「あ!ひっどーい!」
両腕をがっちゃがっちゃと上下させていたM1がおぼつかない足取りで歩いてきてマニピュレーターを突き出すと、時間をかけて一本指にし、ようやくカガリを指差した。
「若様ったら!」
「遅いんだよ!」
あまりの遅さにカガリがつっこむ。
「けどホントのことだろ。ザフトにはバクゥだのディンだの、素早いヤツが一杯いるんだぞ?おまえらなんか何もできないうちに木っ端微塵だ」
「なによぉ、人の苦労も知らないで!」
「あたしたちが毎日どれだけ乗ってると思ってんの?」
また別の声が答える。察するに、いんちきなスクワットのような動きをしているM1のようだ。
「そんなの、敵の知ったこっちゃねぇよ」
「乗れもしないくせに!」
また別の声が言う。
どうやらテスト室の隅で座り込み、立てなくなったM1のパイロットらしかった。
「言ったな!じゃあ今すぐ替わってみろよ!」
カガリは指を突き出して勇ましく言うと、いきなりキラの肩を掴んで押し出す。
「キラと!」
「違うっ!」
身代わりにされたキラがカガリをポカリと殴ると、女の子たちがきゃあきゃあ笑った。
キラは楽しそうに笑うカガリを見て、さっきまでの緊張がすっかりほぐれている事に気づいた。
少し乱暴で明るいカガリの傍にいると、キラの心は不思議なほど和む。
彼が退艦する時は、もしかしたらもう今までのようには会えないのかと思ったけれど、やっぱりカガリはカガリだと確信できた。
「はいはいはい、やめやめやめ!」
テストパイロットたちをいさめ、「カガリ様もふざけないで」と叱りつけたシモンズは、キラに向き直った。
「でも、カガリ様の言うことは事実よ。だから、私たちはあれをもっと強くしたいの。あなたのストライクのようにね」
「え!?」
「技術協力をお願いしたいのは、あれのサポートシステムのOS開発よ。ストライクとまでは言わないけど、せめて的にならない程度に」
「はぁ…あれを…ですか?」
キラは中腰になって拳を突き出したり、しゃがんだまま今度は壁に手をついてしまったり、振り向く動作を繰り返しているM1を見て、(何をどこから始めればいいんだろう)と気が遠くなりそうだった。
正直、情報部からあのクルーゼ隊のメンツを潜入させろと言われたのは大迷惑だ。地球軍への軍事協力が、ウズミ・ナラ・アスハを中心に一枚岩だと信じられていたオーブ首脳陣に内部抗争があると暴き、見た目こそ穏やかだが、オーブは今、混乱と疑心の真っ只中だ。
工作員にとってはこの一番厄介で危険な時に、潜入者など…
「無茶はしてくれるなよ。騒ぎはごめんだ。獅子は眠らせておきたいんでね…」
アスランは無言で頷く。
作業服に着替えた4人は二手に分かれ、オーブへの潜入を開始した。
「第6作業班は、13番デッキより作業を開始してください」
アークエンジェルにはモルゲンレーテの作業着を着た技師たちが群がり、あちこちで火花が散ったり重機が音を立てたりして、ドックはそれこそ戦争のような騒がしさだった。
航行中は満足のいく機材も十分なマテリアルもない中で、ただあるもので必死に整備を続けてきたマードック率いる整備兵たちも、彼らモルゲンレーテと同じ作業着を支給され、優れた機器や豊かな補給品に、嬉々として作業を進めている。
休んでいいと言っているのだが、この立派なドックを見ては整備兵の血が騒ぐのか、ゆっくり休んでいる者などいない。
「機関区、及び外装修理班は、第7ブースで待機」
ナタルは忙しそうに走り回る彼らを見て、やれやれと思う。
「すごいですね、オーブは…」
無尽蔵のように出てくる作業を行う人間や、惜しげもなく供給される修理材料に、ノイマンもはぁ、と感心している。
「驚きました。もう作業にかかってくれるとは」
目の前でウィンチが回り、巨大なクレーンが起き上がっていく。
(あそこはバスターに撃たれた箇所…あっちは恐らくブリッツ…よくもまぁあの状況で堕ちずに航行できたものだ)
ノイマンは必死で舵を取り続けたせいで、今もまだ筋肉痛が残る腕をさすった。
「ああ。それは本当にありがたいと思うが」
ナタルは答える。この代償は戦闘データとヤマトの能力だ。
即ち、オーブにとってはこれだけの事をさせる価値があるのだ。
行くぞ、とナタルはノイマンに声をかけ、ノイマンも後に続く。
戦闘がない今のうちに、内部システムを洗い直したかった。
オーブを出れば、必ずやまた戦闘になるだろうから…
「おはよう」
晴れやかな顔でマリューがブリッジにやってきた。
パル、ナタル、ノイマンがそれぞれの持ち場から挨拶をする。
ナタルは技師たちの名簿をマリューに渡し、既に修理作業に取り掛かっている旨を報告した。
マリューはレポートボードにざっと目を通すと頷いた。
「ヤマト少尉は?」
「先刻、迎えと共にストライクで工場の方へ」
モルゲンレーテからやってきた技師たちは、あのストライクのパイロットである小さな少女の姿を見て一瞬驚いたようだったが、挨拶をし、さほど遠くはない工場までストライクで移動してきてくださいと要請した。
「あちらではエリカ・シモンズ技術主任がお待ちしておりますので、詳しくはそちらでご説明します」
「了解した」
ナタルは彼らのIDを確認し、それからヤマトの出発を許可したのだった。
「そう。ありがと」
ナタルは、出発前になぜか振り返ったキラの顔を思い浮かべた。
そんな、売られていく子馬みたいな顔をしなさんな…フラガ少佐ならそうやってからかいそうな、心細そうな顔を。
モビルスーツに乗れば無双の強さを誇るくせに、あれはまだほんの少女なのだ。
「ん?なに?」
珍しくぼんやりしているナタルに、マリューは優しく声をかけた。
「いえ…」
ナタルは慌てて制帽を直す振りをした。
「ではこの際に、内部システムの点検修理を徹底して行いたいと思っておりますので」
ナタルはノイマンの元へ向かう。
マリューはナタルの様子を不思議に思いつつ、「お願いね」と声をかけた。
広大なモルゲンレーテの敷地を誘導されながら、キラはストライクで歩いて移動した。工場内には高いフェンスが張り巡らされ、監視塔があちこちにあって、なんだかまるで軍の基地みたいだ、と思う。
マリューとフラガに呼び出され、モルゲンレーテでストライクの戦闘データの抽出と、技術協力をして欲しいと頼まれたのは昨日の夜だった。「なぜです?」キラは怪訝そうに尋ねた。
「…艦長はヘリオポリスで言ったじゃないですか。軍の機密を見た私たちを帰すわけにいかないって。私たちは艦長に銃を向けられて、仕方なくアークエンジェルに乗ったんですよね?」
「ええ、それは…」
「そんな大事な技術やデータを、なんで…」
フラガがそんな不服そうに抗議するキラを見て、「ちゃんと話してやりなよ」とマリューを促した。
マリューは少しためらった後、それがオーブから示されたアークエンジェルを修理する「条件」なのだと説明した。
「オーブは軍事技術の向上を望んでおり、そのためにあなたの力が必要なの」
(オーブって、戦わない国じゃないんだ)
キラは腑に落ちないながらもマリューの言葉を渋々承諾し、今こうして彼らの誘導に従っている。
やがて誘導していた車が止まり、技師が出てきて合図をする。
そこにはドックがあり、その奥にエリカ・シモンズのラボがあった。
「…推測の域を出ず、専門外のことでもあるが、以前一度だけ学会誌に発表されて論議を呼んだ、Superior Evolutionary Element Destined-factorを想起されたい…」
エリカ・シモンズはストライク、アークエンジェルの戦闘データを音声ファイルに整理していた。くわえてレドニル・キサカ一佐による報告書を補足資料として読み漁る。
キラ・ヤマトという人となり…彼女がいたいけな少女でありながら、数々の戦闘では男顔負けの常人離れした能力で戦い、しかも勝利してきたという事実…我々コーディネイターの中においても、突出した存在。
学会に発表したのは確か、コーディネイターの若き遺伝子学者だ。
彼の名は…なんといったか。頭文字がDだった気もするが、思い出せない。
あの論文をもう一度探し、遺伝子学に詳しい医師に彼女を徹底的に調べさせて…
エリカ・シモンズはそこまで考えてはたと思考を停止した。
目の前には夫と息子のリュウタの写真が飾ってある。
それを見て、いけないいけない…と頭を振る。
(わずか16歳の女の子に、私は何をさせようっていうの)
やがてインタホンが鳴り、シモンズは返事をした。
「シモンズ主任。キラ・ヤマト少尉をご案内いたしました」
「ありがと。すぐ行くわ」
(ただでさえ、これからその能力を見せてもらうっていうのにね)
「こんにちは、キラ・ヤマト少尉」
キラは挨拶をする相手が思った以上に若くて美しい人だったので驚いた。
「…安心して。私もコーディネイターよ」
ウィンクした彼女がそう言って微笑むと、ラボを案内してくれた。
「ここって…」
今アークエンジェルが収容されているドックほどは規模は大きくないが、キラがシモンズの後について見て回っているラボも、なかなかの設備が揃っていた。
「ここならストライクの完璧な修理ができるわよ」
いわば、お母さんの実家みたいなもんだから…とシモンズは笑う。
「こっち!あなたに見てもらいたいのは」
かつてカガリに、そっちじゃない、こっちだと怒られながらバナディーヤを歩いた時のように、キラは好奇心と驚きできょろきょろしてしまう。やがてシモンズに追いつくと、シモンズがライトをつけた。
「あっ!これ…」
そこにあったのはモビルスーツだった。
キラはストライクのフレームによく似ていながらも、ところどころ違っているそのモビルスーツに驚いて言葉が続かない。
(オーブは…これを造るために地球軍に協力してガンダムを作った…?)
「そう驚くこともないでしょ?あなたもヘリオポリスでストライクを見たんだから」
キラの心を読んだようにシモンズが言う。
キラは黙ってそれを見上げていた。
(これ、ナチュラルでも操縦できるのかな?OSは何を載せてるんだろう?)
哀しいかな、すっかりベテランパイロットのような事を考えている自分にキラは気づかないまま、それらをまじまじと見詰めていた。
「これが、中立国オーブという国の本当の姿だ」
その時、モビルスーツを見上げるキラの後ろから聞き覚えのある声がした。
「カガリ!」
キラの表情がパッと明るくなる。
カガリはブスッとしながら頬を手で押さえ、キラに目で挨拶をした。
最後にアークエンジェルで見送ったスーツ姿の彼は、何だか今までのカガリではないような気がしたが、今はいつもの半袖のシャツとカーゴパンツ、そして愛用のデザードブーツを履いた、キラのよく知る彼がそこにいた。
「これはM1アストレイ。モルゲンレーテ社製のオーブ軍の機体よ」
シモンズは可愛い我が子を自慢するように微笑みながら、量産タイプとしてようやくここまでこぎつけたの、と説明した。
「ただ、フェイズシフトはないんだけどね」
そういえばと、キラはこの機体がディアクティブモード特有のグレイではないことに気づいた。だけど…と一つの疑問が浮かぶ。
「これを、オーブはどうするつもりなんですか?」
思いもかけない質問に、シモンズはえ?という顔をしてキラを見た。
「どう…って?」
シモンズは質問の意味を理解しあぐね、続けてカガリを見る。
「これは、オーブの『守り』だ」
カガリはキラの隣に立つと、M1を見上げながら言った。
「オーブは他国を侵略しない。他国の侵略を許さない。そして、他国の争いに介入しない。その意志を貫く為の力だ」
ああ…キラは認識を新たにした。
それを貫くためには、力がいるということなのだろう。
これだけの軍事工場を持っていて、あれだけの艦隊を率いて…
(想いだけでは、何も守れない。中立を守るためには、「非戦」ではいられないんだ)
矛盾をはらみながらも、オーブは国と理念を守るため、力を持たなければならないということなのだろう…
「オーブはそういう国だ」
ふと、カガリの表情が緩む。
「いや、そういう国のはずだった。親父が裏切るまではな」
カガリは苦々しく言う。
ウズミは、M1を整備するために地球軍に協力するふりをして技術を盗んだ。
それを知れば、プラントは騙されたと考え、地球軍は「盗人」とオーブを責めるだろう。
―― だまし討ちみたいで、卑怯だわ!
苦い思いで思い出したのは、あの美しい女兵士の怒りに満ちた瞳だった。
(くそっ…こんなんじゃ、あいつに言い返せやしない)
キラは怖い顔をしてM1を睨みつけるカガリを見つめていた。
(そうか、お父さんが裏切り者って、それで…)
「あ~ら、ま~だおっしゃってるんですか?そうではないと何度も申し上げたでしょ?」
そんなカガリに、シモンズが呆れたように言う。
「ヘリオポリスが地球軍のモビルスーツ開発に手を貸してたなんてこと、ウズミ様は御存知…」
「黙れ!」
カガリがシモンズの言葉を遮って怒鳴ったのでキラはビクッとする。
キラの驚いた表情を見て、カガリは少し声のトーンを落とした。
「そんな言い訳が通ると思うのか?国の最高責任者が知りませんでしたなんて、それも罪だ!」
大体、あのサハクやそれに乗ったセイランの動きを読めなかった政府にも非はある。
「だから、責任はお取りになったじゃありませんか」
ウズミは混乱を収めるべく代表を辞し、一首長へと戻ったのだ。
「なーにが」
カガリはパタパタと手を振った。
「職を伯父上に譲ったところで、常にああだこうだと口を出して、結局何も変わってないじゃないか」
「仕方ありません」
シモンズは「絶対まだ自分が代表のつもりだ」と父をなじるカガリに、呆れながらも穏やかに言った。
「ウズミ様は、今のオーブには必要な方なんですから」
「卑怯者だがな!」
カガリのさもバカにしたような言葉に、シモンズもついに「カガリ様!」とたしなめる。
「まったく…」
そう言いながらシモンズはキラを見て笑った。
「あれほど可愛がってらした若様がこれでは、ウズミ様も報われませんわね」
キラはなんとなくわかる気がした。カガリは、お父さんが大好きなんだろうと。だからこその怒りなのだろう。
「おまけに昨日のあの騒ぎでは、確かにほっぺの一つも叩かれますわ」
「え?」
キラはそう言われてもう一度カガリをまじまじと見た。
「叩いたなんて生易しいもんじゃないぞ!グーだ、グー!」
見ろ、とカガリはキラに腫れあがった左頬を見せた。
「容赦ないんだ、あいつ…」
カガリはブツブツ言いながら痛そうに頬を抑えた。
キラは何だか可笑しくてくすくすと笑ってしまったが、カガリは「笑うな!」とキラの頭を突つく。
シモンズはそんな風に仲のよい2人を微笑ましく見ていたが、「さ、こんなおバカさんは放っといて、来て!」とキラを促し、2人はじゃれあいながら彼女の後を追った。
「アサギ、ジュリ、マユラ!」
シモンズが呼びかけると、「はーい」と女の子たちの声がする。
強化ガラスの向こう側にはM1が3機、ぎこちなく動いていた。
キラは「一体これは?」と、カガリとシモンズを見た。
「あ!カガリ様?」
スピーカーからはさらに別の女の子の声が聞こえてくる。
(オーブのパイロットも女の子なんだ…ナチュラル?コーディネイター?)
キラがそんな事を考えていると、1機のモビルスーツがよたよたと歩み寄って管制室を覗き込んだ。
「あら、ほんと」
別の声が笑う。
「なーに、もう帰ってきたの?」
「早かったのね。もっとかかると思ってたのに」
「で?世界を見る旅とやらは終わったの?」
くすくす笑いながら彼女たちは次々と尋ねた。
「悪かったな」
カガリは容赦のない彼女たちの言葉にブスッとふくれた。
ひとしきり会話した後、シモンズが「さ、始めて」と言うと、3人ははいと返事をした。
(はい、はいいけど…何やってるんだろう…)
キラはポカンとして見ていた。
(めちゃくちゃぎくしゃくした動き…人間で言えば、右手と右足が同時に出ているような、関節が硬くてどんな動作をするにも一呼吸置く高齢者みたいな…なんというか…)
キラが思わずカガリを見ると、カガリも「何も言うな」という顔でキラを見る。
「言いたい事はわかってるよ。おまえから見たら驚きだろうな」
それからカガリは腕組みをしてシモンズに言った。
「相変わらずだな…俺が出かける前と何にも変わっちゃいないじゃないか」
「でも、倍近く速くなったんです」
シモンズは困ったように答えた。
「ソフトを改良して、サスペンションも上げましたし…」
カガリはため息と共に、彼女たちの操縦をまじまじと見ているキラをチラリと窺った。
(キラの戦いぶりを初めて見た時、モビルスーツとはこんなにも人のように自由に動けるものかと思った。時には美しいとさえ思うほど…それに比べて…)
「あーあ」とカガリは腕を頭に載せた。
「これじゃ、あっという間にやられるぞ。何の役にも立ちゃしない、ただの的じゃないか」
キラは答える代わりにうーんと首を傾げた。
「あ!ひっどーい!」
両腕をがっちゃがっちゃと上下させていたM1がおぼつかない足取りで歩いてきてマニピュレーターを突き出すと、時間をかけて一本指にし、ようやくカガリを指差した。
「若様ったら!」
「遅いんだよ!」
あまりの遅さにカガリがつっこむ。
「けどホントのことだろ。ザフトにはバクゥだのディンだの、素早いヤツが一杯いるんだぞ?おまえらなんか何もできないうちに木っ端微塵だ」
「なによぉ、人の苦労も知らないで!」
「あたしたちが毎日どれだけ乗ってると思ってんの?」
また別の声が答える。察するに、いんちきなスクワットのような動きをしているM1のようだ。
「そんなの、敵の知ったこっちゃねぇよ」
「乗れもしないくせに!」
また別の声が言う。
どうやらテスト室の隅で座り込み、立てなくなったM1のパイロットらしかった。
「言ったな!じゃあ今すぐ替わってみろよ!」
カガリは指を突き出して勇ましく言うと、いきなりキラの肩を掴んで押し出す。
「キラと!」
「違うっ!」
身代わりにされたキラがカガリをポカリと殴ると、女の子たちがきゃあきゃあ笑った。
キラは楽しそうに笑うカガリを見て、さっきまでの緊張がすっかりほぐれている事に気づいた。
少し乱暴で明るいカガリの傍にいると、キラの心は不思議なほど和む。
彼が退艦する時は、もしかしたらもう今までのようには会えないのかと思ったけれど、やっぱりカガリはカガリだと確信できた。
「はいはいはい、やめやめやめ!」
テストパイロットたちをいさめ、「カガリ様もふざけないで」と叱りつけたシモンズは、キラに向き直った。
「でも、カガリ様の言うことは事実よ。だから、私たちはあれをもっと強くしたいの。あなたのストライクのようにね」
「え!?」
「技術協力をお願いしたいのは、あれのサポートシステムのOS開発よ。ストライクとまでは言わないけど、せめて的にならない程度に」
「はぁ…あれを…ですか?」
キラは中腰になって拳を突き出したり、しゃがんだまま今度は壁に手をついてしまったり、振り向く動作を繰り返しているM1を見て、(何をどこから始めればいいんだろう)と気が遠くなりそうだった。
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制作裏話 -PHASE27-
本編では「いつ出るんだ」と心待ちにされていたM1アストレイが登場し、「変な太極拳」を披露して視聴者を爆笑させた「総集編」です。まさか2話連続で総集編とは、お釈迦様でも気がつくまい…
というわけで、本編ではひたすらエリカ・シモンズが語るだけの話でしたが、逆種では後半の話を膨らませています。
私は本編のPHASE26は見ましたが、10年近くアニメを離れていたため、まだ本気でSEEDを見続けるというのは「いい年をして死ぬほど恥ずかしい」と思っていました。
なのでこのPHASE27、31は見そびれてしまいました(当時でもPHASE31を見そびれたのは残念だったと思い、それ以降は全て見るようになりました。本気で見るようになり、録画を始めたのはPHASE37くらい)
エリカ・シモンズを見て、オーブという国の特徴を知るにつれ、「このキャラ、コーディネイターだろうな」と直感しました。けれど本編ではそれが明かされることはなく、ムック等の設定書を買わない私は設定もなかなか知ることができませんでした。シモンズは外伝でもかなり活躍しているらしいキャラなので(私はアストレイは実際には読んだ事がないのですが、設定くらいはなんとなく知っています。なのでカガリに「サハク」の名を言わせました)そっちで明かされるかと思っていたら、案の定です。
今は同じく本編でははっきりとは明かされなかった「クルーゼはナチュラル」と同じくらい普通に、「エリカ・シモンズはコーディネイター」という設定が明かされています(一方、『クローン』のレイは未だに『ナチュラル?』などと言われています。だってナチュラルのフラガのクローンが遺伝子いじったら、その時点でクローンちゃうでしょ!と言いたい)
ちなみに彼女の夫はナチュラルで、リュウタはハーフ・コーディネイターなのだそうです。
エリカがコーディであると公式に設定されたのが喜ばしかったので、逆種ではこの時点でキラを安心させるために、エリカに正体をばらさせました。
でもこういうシーンって本編であってもよかったと思うんですが…
オーブが本当にコーディネイターを受け入れているとわかるし、不安げなキラを慮ることにもなるし。
ちなみに、ナタルにも心細そうなキラを心配させました。キラが女の子だからこそかなとも思いますが、ナタルはこれまでもこれからもちょこちょこと補完しています。
ウズミにグーで殴られたカガリが早速再登場し、キラとじゃれ合い、アストレイのお姉さんたちとは仲のよさそうな会話を繰り広げます。
本編では女同士なので仲良しなのは何てことないのですが、後々アスランがこうした「男女分け隔てなく接するカガリ」が皆に慕われる光景を見て、ちょっとだけむっとするシーンを入れようと思っていました。
またこうしたカガリの性格はぶれることなく、逆デスで結構活躍させたミリアリアともすっかり仲良くなっています。
本編では種でも運命でも、今ひとつカガリが主要キャラ以外の同年代キャラと仲よくする描写がなかったので、逆転ではなるべく入れるようにしました。
というわけで、本編ではひたすらエリカ・シモンズが語るだけの話でしたが、逆種では後半の話を膨らませています。
私は本編のPHASE26は見ましたが、10年近くアニメを離れていたため、まだ本気でSEEDを見続けるというのは「いい年をして死ぬほど恥ずかしい」と思っていました。
なのでこのPHASE27、31は見そびれてしまいました(当時でもPHASE31を見そびれたのは残念だったと思い、それ以降は全て見るようになりました。本気で見るようになり、録画を始めたのはPHASE37くらい)
エリカ・シモンズを見て、オーブという国の特徴を知るにつれ、「このキャラ、コーディネイターだろうな」と直感しました。けれど本編ではそれが明かされることはなく、ムック等の設定書を買わない私は設定もなかなか知ることができませんでした。シモンズは外伝でもかなり活躍しているらしいキャラなので(私はアストレイは実際には読んだ事がないのですが、設定くらいはなんとなく知っています。なのでカガリに「サハク」の名を言わせました)そっちで明かされるかと思っていたら、案の定です。
今は同じく本編でははっきりとは明かされなかった「クルーゼはナチュラル」と同じくらい普通に、「エリカ・シモンズはコーディネイター」という設定が明かされています(一方、『クローン』のレイは未だに『ナチュラル?』などと言われています。だってナチュラルのフラガのクローンが遺伝子いじったら、その時点でクローンちゃうでしょ!と言いたい)
ちなみに彼女の夫はナチュラルで、リュウタはハーフ・コーディネイターなのだそうです。
エリカがコーディであると公式に設定されたのが喜ばしかったので、逆種ではこの時点でキラを安心させるために、エリカに正体をばらさせました。
でもこういうシーンって本編であってもよかったと思うんですが…
オーブが本当にコーディネイターを受け入れているとわかるし、不安げなキラを慮ることにもなるし。
ちなみに、ナタルにも心細そうなキラを心配させました。キラが女の子だからこそかなとも思いますが、ナタルはこれまでもこれからもちょこちょこと補完しています。
ウズミにグーで殴られたカガリが早速再登場し、キラとじゃれ合い、アストレイのお姉さんたちとは仲のよさそうな会話を繰り広げます。
本編では女同士なので仲良しなのは何てことないのですが、後々アスランがこうした「男女分け隔てなく接するカガリ」が皆に慕われる光景を見て、ちょっとだけむっとするシーンを入れようと思っていました。
またこうしたカガリの性格はぶれることなく、逆デスで結構活躍させたミリアリアともすっかり仲良くなっています。
本編では種でも運命でも、今ひとつカガリが主要キャラ以外の同年代キャラと仲よくする描写がなかったので、逆転ではなるべく入れるようにしました。