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Natural or Cordinater?
サブタイトル

お知らせ
PHASE0 はじめに 
PHASE1-1 偽りの平和①
PHASE1-2 偽りの平和②
PHASE1-3 偽りの平和③
PHASE2 その名はガンダム 
PHASE3 崩壊の大地
PHASE4 サイレント ラン
PHASE5 フェイズシフトダウン
PHASE6 消えるガンダム
PHASE7 宇宙の傷跡
PHASE8 敵軍の英雄
(原題:敵軍の歌姫)
PHASE9 消えていく光
PHASE10 分かたれた道
PHASE11 目覚める刃
PHASE12 フレイの選択
PHASE13 宇宙に降る星
PHASE14 果てし無き時の中で
PHASE15 それぞれの孤独
PHASE16 燃える砂塵
PHASE17 カガリ再び
PHASE18 ペイバック
PHASE19 宿敵の牙
PHASE20 おだやかな日に
PHASE21 砂塵の果て
PHASE22 紅に染まる海
PHASE23 運命の出会い
PHASE24 二人だけの戦争
PHASE25 平和の国へ
PHASE26 モーメント
PHASE27 果てなき輪舞
PHASE28 キラ
PHASE29 さだめの楔 
PHASE30 閃光の刻
PHASE31 慟哭の空
PHASE32 約束の地に
PHASE33 闇の胎動
PHASE34 まなざしの先
PHASE35 舞い降りる剣
PHASE36 正義の名のもとに 
PHASE37 神のいかずち
PHASE38 決意の砲火
PHASE39 アスラン
PHASE40 暁の宇宙へ
PHASE41 ゆれる世界
PHASE42 ラクス出撃
PHASE43 立ちはだかるもの 
PHASE44 螺旋の邂逅
PHASE45 開く扉
PHASE46 たましいの場所
PHASE47-1 悪夢はふたたび①
PHASE47-2 悪夢はふたたび②
PHASE48-1 怒りの日①
PHASE48-2 怒りの日②
PHASE49-1 終末の光①
PHASE49-2 終末の光②
PHASE50-1 終わらない明日へ①
PHASE50-2 終わらない明日へ②
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機動戦士ガンダムSEED 男女逆転物語
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「明けの砂漠に!」
サイーブが酒のカップを掲げると、既にあちこちでふるまい酒をもらって上機嫌のマリューが応えた。
「勝ち取った、未来に!」

フラガはどうやら見かけによらず酒豪らしい彼女を見て苦笑しながら、「じゃ、そういうことで!」と言うと、ナタルとカチンとグラスを合わせ、グーッと杯を空ける。
一方、プハーッと満面の笑顔のマリューに比べて恐る恐る口をつけたナタルは、強いアルコールにむせてげほげほと苦しそうに咳込んだ。

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砂漠の虎を打ち破った夜。
基地に戻った明けの砂漠構成員たちとアークエンジェルクルーは、大きな焚き火を炊いてささやかな祝杯をあげていた。
トノムラやチャンドラたちも一緒になって酔っ払い、不測の事態に備えて酒は控えているノイマンとパルにいい加減にしろと呆れられた。
ミリアリアもトールもカズイも、サイすらもその席で喜びを共にしていた。
まだ負傷者の手当てで忙しいカガリがあちこちで皆に声をかけられている。
「でもまだ大変だなぁ、あんたたちも。虎がいなくなったって、ザフトはいなくなったわけじゃない。奴らは鉱山が欲しいんだろ?」
フラガは前々からの懸念を口に出した。
けれど勝利に酔いしれるサイーブは強気だ。
「その時はまた戦う。俺たちは戦い続ける。俺たちを虐げようとする奴らとな!」

その頃、外では戦死した仲間たちへの追悼の祈りが始まっていた。
コズミック・イラとなって以来、宗教は力を失って久しい。かつてこの地の人々は、厳しい戒律をもとに、酒も飲まず、時には断食をし、一日数回に及ぶ神への祈りを欠かさなかった。
しかしその強烈な宗教観も、再構築戦争とコーディネイターの登場という驚異的な価値観の崩壊と共に、やがて忘れ去られ、失われていったのだ。
(だが…)
フラガは友のために祈りをささげる彼らを見ながら、人はどこかに、神にすがろうとする弱さとしたたかさを残して生きているのだろう、と思う。
(そうでもなきゃ、殺し合いなんかできないのかもしれないな)
自嘲気味に笑ったフラガはふと、キラの事を思った。
戦いを終えてストライクから出てきた彼女は、また暗い表情に戻っていた。
そんな彼女を迎えたフレイが自室へ連れて行ったまま、以来姿を見せていない。
「ストライクの整備にも来やしねぇ!」
マードックがブツブツ怒るのを、「まぁまぁ」となだめながら、状態はよくはないが、今はそっとしておくしかないだろうとも思った。
「戦い続ける、か…」
フラガは曇ったグラスを軽く振り、残った酒を飲み干した。

数日を修理と補給に費やして、アークエンジェルは出発した。
ザフト側からの報復があるかもしれないので、もう少し様子を見ようと申し出たマリューの言葉を、サイーブはうるさそうに断るばかりだった。
「俺たちにはもう貸しも借りもない。さっさと出発しな」
そう言って素っ気なく立ち去った彼の後姿に、マリューは深々と頭を下げた。
しかしもう一方の「招かれざる客」は頑迷だった。
「俺を連れて行った方がいい。あんたたちよりは情勢に詳しいし、補給の問題やら何やらあった時には、力になってやれるしな」
アークエンジェルが出発を決めて以来、カガリ・ユラはキサカを伴って何度も艦長室を訪れ、マリューに交渉を持ちかけていた。
フラガも何度か同席したが、ナタルはそもそも民間人を乗せること自体に反対だとして、話し合いそのものを拒否していた。
「俺だって何もアラスカまで行こうってんじゃない」
この時もカガリは熱心に2人を説得していた。
「地球軍に入るつもりもない。だけど今は、俺たちみたいな水先案内人が必要だろ?」
「きみが力にって?」
街から戻ったトノムラが眼をひん剥いて喋るところによれば、ナタルが欲しがった装備や武器弾薬を、あのキサカという大男がぽんとキャッシュで買ったと聞いてはいる。2人が怪訝そうな顔をしているので、カガリは慌てて眼を泳がせた。
「あ~、いや…だからその…いろんな助けがだ」
それを見てキサカがため息をつく。
「助けって言われても…」
マリューは困ったようにフラガを見ると、フラガもへらっと笑って言った。
「ん~、けど一応これ、軍艦だからさぁ。きみたちみたいな民間人は…」
「とにかく、俺はアークエンジェルと一緒に行くからな!」
そんなフラガの言葉を遮るように言い捨てると、カガリは扉を開けた。
「もう決めた!」
「…軍神、ね」
全く話を聞いてもらえなかったフラガは苦笑して彼を見送っている。
「民間人が戦闘行為をすると犯罪だけど、神様ならしょうがないんじゃないの?」
「何言ってるんですか、少佐」
マリューは説得できなかったフラガを睨みつけ、フラガはといえばどこ吹く風で残ったキサカを見て聞いた。
「で、彼、ほんとは何者なの?」
「…」
しかしその質問には答えず、キサカもまた部屋を出て行った。

紅海に出ると、ザフトの追撃もレーダーへの異常もなく、航海は順調だった。
しばらく姿を見せなかったキラもようやく部屋から出てきて、まずはマードックにこっぴどく叱られた。そう言いつつも、ストライクの整備はほぼ完璧にやってくれていたマードックに、キラは素直に「すみませんでした」と頭を下げた。
「ったく、おまえだけが頼りなんだぜ?」
なんでも、今回はストライクの整備に加えて艦全体のソナー探知の調整も手伝って欲しいのだという。Nジャマーによってレーダーが意味を成さない地上では目視が、海中ではソナーが敵を捉える「眼」になる。
2人がその調整に四苦八苦しているところに、副長から通信が入った。
「マードック曹長!ソナーの準備はどうなっているか?」
マードックは少しうるさそうに「今やってまさぁ」と答える。
「嬢ちゃんが最後の調整中です。もう少し待ってください」
そのやや面倒くさそうな声がナタルをカチンとさせたようだった。
「曹長、自分より上の階級の者を嬢ちゃんなどと呼ぶのは規律が乱れる元だ」
「う…はぁ、すんません」
それを聞いて彼らの作業を横から覗いていたフラガは大笑いした。
「やれやれ、中尉さんは相変わらずお堅いことで」
通信を切ったマードックも肩をすくめ、変な顔をしながら言った。
「急げってさ」
「そう言われても…」
キラは顔をあげずに答えた。
「これ、ザフトのなんですから、そう簡単には繋がりませんよ」
男2人がお堅い女の言葉を茶化して笑いあうのを聞きながら、キラだけが難解なプログラムの書き換えに没頭していた。

その頃、ブリッジの子供たちはマリューの計らいによって美しく輝く紅海上でデッキに出ることを許されていた。
砂の海から豊かな水の海へ…ミリアリアもトールもはしゃいでいたが、コロニー育ちのカズイは大量の水におっかなびっくりで、手すりに掴まるのもビクビクすしている。
ミリアリアがそんなカズイを脅かし、きゃあきゃあはしゃいでいた。
一方シフトに入っているサイが残ったブリッジには、キサカがいた。
キサカは計器を見てまわり、たまに無駄なシステムが起動していると注意したり、効率のよい航行についてノイマンに的確なアドバイスをしては、(本当に、この人は何者なの?)と相変わらずマリューの首を傾げさせていた。
「しかし呆れたものだな、地球軍も。アラスカまで自力で来いと言っておいて、補給も寄こさないとはな。水や食料ならどうにかなるだろうが…戦闘は極力避けるのが、賢明だろうな」
一通りチェックを終えたキサカが言った。
補給もない、援護もない。人員は足りない。戦力はもってのほか。ないないづくしの艦にダメ出しをされてもどうしようもない。
「ええ、それしかありません」
「だがインド洋のど真ん中を行くというのは、こちらにとっても厳しいぞ。何かあった場合には、逃げ込める場所もない」
ため息混じりのマリューに代わり、ナタルが立体航海図を見ながら答えた。
基地などもちろんなく、ザフト制空圏内ではたとえ民間人とて信用できない。
それを聞いたキサカも海図に眼を落としながら言った。
「ザフトは領土拡大戦をやっているわけではないんだ。海洋の真ん中は、一番手薄だ。あとは運だな」
「運…ですか」
サイが心許なさそうに呟くと、キサカがチラリと彼女を見た。
「敵が出てこないよう、祈るしかないだろう」

ソナーの調整の目処がつくと、キラもようやくデッキに向かったが、そこにはもう誰もいなかった。
キラは細かな作業で固まってしまった体をほぐすと、ふーっと大きく息をついた。
降り注ぐ太陽は、砂漠のそれよりはやや柔らかい。
潮風が髪をなぶり、じりじりと肌を灼く太陽光線をやわらげて、ほんの少し涼しさをもたらしてくれる。
息を吐ききったキラが再び大きく吸い込むと、温かくて少し生臭い空気が鼻腔をくすぐる。
戦いの日々が嘘のように、広い海はのどかで穏やかだった。
このまま静かに日が過ぎてくれるなら、もう二度とストライクになど乗らず、戦わずに済むのにとも考えたが、それはすぐに先の戦闘の記憶でかき消された。

(だぁぁ!待ちたまえ!レディまで邪道に堕とす気か!?)
(何でこれを鯨石と言うのかねぇ。これ、クジラに見える?)
(ならどうやって勝ち負けを決める?どこで終わりにすればいい?)
(敵である者を、すべて滅ぼして、かね?)
(戦うしかなかろう。互いに敵である限り!どちらかが滅びるまでな!)

キラの心に、強烈な印象を残したバルトフェルドの姿が浮かぶ。
戦争は、個人の力でどうこうできるものではない。
ハルバートン准将が言ったように、自分やバルトフェルドがいくら足掻いても、あの時、戦いは止められなかった。もしキラが無抵抗だったなら、彼は迷わず殺しただろう…「敵」である自分を。
(でも…本当に、どうにもならなかったんだろうか?)
また、キラの心を蝕むのはその答えの出ない問題だけではなかった。

(まだだぞ、バーサーカー!)
(確か、普段はおとなしいのに、戦いになると興奮して、人が変わったように強くなるってヤツだったかな)

「バーサーカー…」
コーディネイターだからと戦わされてきた自分が、本当は戦いで高揚感を得るような本物の化物だったら…そう考えてしまうたび、キラは嫌悪感に怖気だった。
(命を弄び、殺すことに悦びを感じるなんて…イヤだ…!)
キラは燦燦と照りつける太陽の下で寒気を感じ、自分の腕を手で掴んだ。 
「だって…私が戦わなきゃ…倒さなきゃ…みんな…」
不安に苛まれ不安定になったキラを、フレイはいつも優しく抱き締めてくれた。
(フレイは、よくやったって言ってくれた)
キラはフレイがくれる温かさと優しさを思い出し、必死に自分を慰めようとした。
(ずっと傍にいてくれた。抱きしめてくれて、怖かったろうって…守ってくれてありがとうって…)
そして自分に言い聞かせるように小さくつぶやいた。
「だから……私は…間違ってない…」
「なんだ、おまえもデッキに出てたのか」
いつの間にか泣いていたキラは、その声にはっと気づいて慌てて涙をぬぐった。
ジャケットを脱いで赤いシャツだけの身軽な姿になったカガリは、うーんと気持ちよさそうに伸びをしている。
「いい天気だなぁ」
「あ…うん…」
キラは慌てて彼から顔を背けると、その脇をすり抜けて艦内に戻ろうとしたのだが、カガリは目ざとくキラの表情に気づいて覗き込んだ。
そして顔を背けているキラを怪訝そうに見て言った。
「…おまえ、泣いてたのか…?」
キラはさらに顔を背け、カガリを押しのけて去ろうとした。
(誰にも見られたくなかったのに…!)
ふと、同じように泣いているところを見られたラクスの事が思い出されて、キラの心に言い知れない想いが蘇った。傷ついた身体で優しく笑う彼がくれた安心感が、彼の隣に立っていたアスランと共に思い出され、無性に心がざわめく。
「待てよ!」
「え…」
カガリはキラの細い腕を掴み、驚いたキラは思わず振り返ってしまった。
紫の瞳を濡らす涙を見て、カガリは眉をひそめた。
(やっぱり)
バルトフェルドとの戦闘後、キラはまた姿を見せなくなった。
たまに艦内で見かけても、フレイという男がべったりと張りつき、彼女が1人になる機会がなくて、話しかける事もままならなかった。トールやサイというキラの仲間ですら、キラには話しかけにくそうだったのが気になっていたのだ。
(それで、こんなところで…)
頭一つとは言わないが、自分の頬くらいまでしかない小さな体で、すべてを背負って、自分と同じコーディネイターと戦っているキラ。
(一人ぼっちで泣いてるなんて)
「あ…え?ちょ…ちょっ…」
キラが戸惑うのもかまわず、カガリはそのままキラを抱きしめた。
それからまるで小さな子供をなだめるように、ゆっくりと、優しく言った。
「よしよし…大丈夫だ。大丈夫だから。大丈夫だ。大丈夫…」
そのままぽんぽんと軽くリズミカルに叩いてくれる背中が心地よくて、キラはこわばっていた体がほぐれ、心が少しずつ軽くなっていくのを感じた。
(あったかいな…)
キラがカガリのぬくもりに、フレイに感じるものとは違う、もっと優しい、いたわられるような温かさを感じたように、カガリもまた、キラを抱きしめる事で不思議な安らぎを得ていた。
恋愛は無論のこと、友愛ですらもない、もっと原始的で温かいぬくもり…2人はしばらく互いの心地のよいぬくもりを感じていたが、やがてカガリが身を離し、キラもそっとカガリの体を押し返した。
「落ち着いたか?」
「あ…うん」
なんとなく離れがたい気持ちもしたが、2人は少し距離をとり、やがて互いの顔を見ると、カガリは突然ボッと顔を赤くした。
「ご、誤解するな!泣いてる子は放っておいちゃいけないって、昔言われたんだ!…どんな子供も、1人で泣いたらいけないって…!」
カガリは真っ赤な顔のまま、早口でまくしたてた。
彼の無防備なまでの他人との距離感の近さと、それに似合わないこんな晩生さのギャップには、むしろキラの方が面食らってしまった。
「ただ、そういうことなんだからな!これは…!」
キラはそれ以上カガリの自尊心を傷つけないよう、こくりと頷いた。
「わかってる。慰めてくれたんだって」
「あ、ああ…うん…」
キラにそう言われて、気恥ずかしいながらもカガリも落ち着いたようだった。
「最近、おまえの様子が変だから、ちょっと心配していた」
カガリはそう言うと自分の左の頬を掌で押さえてみせた。
「この間は偉そうなこと言って、人のことひっぱたいといて」
「あっ…ごめん」
キラはその時のことを思い出し、慌てて謝った。
(気持ちだけで、何が守れるって言うんだ!)
そう言った自分が、守らなければならないものを守った戦いで苦しんでいる。
「ま、いいけどな、もう」
カガリは別に気にしてないと肩をあげる。
そしてデッキに座ると、「おまえも座れ」とぽんぽんと床を叩いた。
「そういえば、なんでおまえ、コーディネイターなんだ?」
そのあまりにも唐突なカガリの質問にキラはきょとんとする。
しかし、質問をした当のカガリも「あれ?」という顔をしている。
「ああ、じゃないじゃない。コーディネイターのくせに、なんで地球軍にいるのかって聞きたかったんだった」
キラはカガリの隣に座ると、小首を傾げた。
「やっぱ、おかしいのかな?」
キラはアスランが何度も問いかけてきた言葉や、アークエンジェルに乗り込んだ時、真っ先に銃を向けた整備兵、アルテミスのガルシアやバルトフェルドの言葉を次々と思い出した。
「よく言われる」
「おかしいとか、そういうことじゃないけどな」
しかし、カガリはきっぱりと否定した。
「でもコーディネイターとナチュラルが敵対してるからこの戦争が起きたわけで…おまえには、そういうのはないのか、ってことさ。つまり、俺たちナチュラルに対して、嫌いとか憎いとか」
キラはこれまで、ナチュラルを嫌いだなどと思った事はなかった。
というか、あまりそういった事を意識してこなかったというのが正しい。
(だけど…)
キラは心の奥にしまいこんだ傷に眼を向けた。

フレイに罵られた時…サイを傷つけた時…私は…ナチュラルに対して何も思わなかっただろうか…憎んだり、怒ったりしなかったろうか?
そしてユニウスセブンを見た時も…アスランのお母さん、ラクスの体…それをナチュラルがやったんだと、私は憤りはしなかったろうか?
「できるんだから」やるのが当たり前と思われているようで、ナチュラルに対して不平や不満を持たなかったろうか…

「カガリには?」
その質問に純粋に「ノー」と答えることができず、キラは思わず質問返しをしてしまった。
「うーん…俺は別に、コーディネイターだからどうこうって気持ちはないな」
カガリは何の気負いもない様子でぼそりと答えた。
それを聞いたキラの顔がぱっと明るくなり、思わず「私も!」と答えてしまう。
「ただ、戦争で攻撃されるから戦わなきゃならないだけで」
「私も!」
(ああ、そうだよ、そのとおりだ。戦争じゃなかったら、アスランともカガリとも戦ったりしない、絶対に)
「ん?」
そこまで言ってからカガリは思いついたように拳を振り上げた。
「結局俺の質問に俺が答えて、おまえは自分もって答えてるだけじゃんか!」
怒るカガリを見て、キラは思わず笑ってしまった。どこか内気なところがあるキラだが、少し乱暴で奔放なカガリとは、屈託なく笑いあえるのが楽しかった。
笑い終わると、キラは輝く海の彼方を見つめながらポツリと呟いた。
「コーディネイターだって同じなのに。みんなと…」
「でもおまえたちは、俺たちよりずっといろんなことができるだろ?」
カガリもまた少し真顔で言った。
「ちゃんと練習したり、勉強したり、訓練したりすればね」
自分は何も特別な訓練を受けたことはない。ゲームをやったり、漫画を読んだり、TVを見たり…アスランと遊んで、おしゃべりして、普通の子供時代を過ごしたと思っている。
「コーディネイターだからって、赤ん坊の頃から何でもできるわけじゃないよ」
「そりゃ、まぁ、そうだよな」
カガリは自身が受けてきた教育を思い出しながら言った。
「確かに、怖い病気にはかかんないし、何かの才能とか体とか、色々遺伝子を操作して生まれたのが、私たちだけど…でもそれって、ナチュラルの…というか、夢だったんじゃないの?みんなの…」
「うん」
「なのに、今になってそれはおかしい、それはいけないって言われても…」
「だよなぁ」
キラは、この戦いに巻き込まれて以来、ずっと考えていたナチュラルとコーディネイターの関係について、たどたどしく語った。それは理論にすらなっていない、ただの稚拙な意見だったが、キラの正直な気持ちでもある。
逆に、相手がカガリだからこそ言えたのかもしれなかった。
カガリは馬鹿にしたりせず、キラの言葉を一生懸命聞いてくれた。
そして「おまえ、意外とちゃんと考えてるんだな」なんて感心している。
キラはそんなカガリを見てはにかむように笑った。
「そんな事ないよ。私もこれまで、ちゃんと考えた事なかったから」
「キラ!こんなところにいたのか?」
その時突然、2人の会話を遮るようにフレイが現れた。
フレイは座っていたキラの手を取ると、そのまま引き上げて立たせた。
「暑いな…探したよ。デッキに出るなら誘ってくれればいいのに」
「あ、ごめん」
キラはカガリを気にしながらも、フレイに肩を抱かれる。
久しぶりに感じた安らげる時間が壊れていく事を残念に思いながら、とはいえキラにはフレイの手を振りほどくことはできなかった。
「気持ちがいいね。でも、これじゃキラの肌が日に焼けちゃうよ。少ししたらまた部屋に戻ろう?」
カガリはムスッとした顔をしていたが、さてと、といった感じで立ち上がった。
「じゃーな、お邪魔みたいだから」
ばいばい、と手を振ったカガリを見て、キラはひどく寂しい気持ちになった。

「違うよ!そうじゃないってば。パッシブソナーは基本的には…」
「いやー、そんなことないって」
「ちょっと!うるさいよ」
キラとマードックが苦労して整えたソナーについて、ブリッジではあれこれやり取りがなされていた。
大人の男たちがわいわいと大騒ぎしているのを見て、ミリアリアやサイはくすくすと笑った。
ミリアリアは、最近ようやくサイがこんな風に笑うようになったので安心していた。聡明な彼女の事だ。自分たちに心配をかけてはいけないと心を強く持っているのだろう。
(整理できるはずはないけど、少しずつ受け入れているんだろうな…)
しかしその平穏はすぐに破られた。
どうやらこの艦はキサカが言うところの「運」には見放されているようだ。
カズイがレーダーに機影を見たとトノムラに伝えている。
「また民間機とかじゃないのか?」
チャンドラが茶化したが、改めてトノムラが見た機影は、戦闘機にしては移動速度が遅く、とはいえ民間機にしてはかなり速い。
「攪乱ひどく特定できませんが、これは民間機ではありません」
「総員、第二戦闘配備!機種特定、急いで!」
(会いたくない時に限って現れるなんて…)
マリューはムカムカしながらテキパキと指示を下した。
(ホント、しつこく迫ってくる男みたい!)

アークエンジェルクルーは当然知る由もないが、襲ったのはカーペンタリア所属のマルコ・モラシムが率いる潜水部隊だった。
ザフト制圧下のインド洋の哨戒を主に行う彼らは、「砂漠の虎」ことバルトフェルド隊全滅の報を受けた直後、クルーゼから特別な打診を受けていた。
内容は「紅海に逃した足つきを追って欲しい」というものだ。
仮面をつけた男の頼みなど聞いてやる気もないが、そのクルーゼを出し抜き、砂漠の虎を撃破してきた足つきは、面白そうな獲物に思えた。
モラシムは狭い潜水艦の中で、クルーゼが送りつけてきた白々しいほど慇懃でありながら無礼な内容の通信映像を乱暴に切った。
「胸くそは悪いが、挑発に乗ってやってもいいぞ、ラウ・ル・クルーゼ」
モラシムが率いるのは、水中戦に特化したモビルスーツ、グーン隊である。
「よーし!足つきを確認した!グーン隊、発進準備!」
ソナーのマークを見つめながら、モラシムはニヤリと笑った。
(ナチュラルどものホームで、我らコーディネイターが目に物を見せてやるのも面白い)

「ライブラリー照合」
近づいてきた機影は、大気圏内用モビルスーツ、AMF-101ディンだった。
シグーによく似たフレームだが、機体そのものはより軽量化が図られ、大気圏内飛行を可能にしている。
機体を確認したことでマリューは第2から第1へと戦闘配備を切り替えた。
そしてそのままフラガとヤマトに搭乗を命じたので、ナタルが驚いて振り向いた。
「艦長!ストライクは…」
「空も飛べなけりゃ泳げもしないってことくらい知ってるわ!」
ではなぜ、と抗議するナタルのまなざしを受け流しながらマリューは言った。
「でも、なんとかしなきゃ…このままじゃ、好きにやられるだけよ!」
サイが再び敵機の接近を伝える。
「ディン接近!10時、4時の方向です!」
「ミサイル発射管、7番から10番、ウォンバット装填、撃ぇーっ!イーゲルシュテルン起動!」
ナタルは大気圏内用ミサイルを準備し、イーゲルシュテルンとバリアントを併せて迎撃態勢を取る。
(スカイグラスパーが連中を引きつければ、艦上のストライクも砲台代わりにはなるだろう)
不平や不満を抱えていても、最善の策を考えるのは彼女のポリシーでもある。
「スカイグラスパー1号、発進位置へ。スカイグラスパー、フラガ機。進路クリア。発進どうぞ!」
「よっしゃあ!出るぞ!」
ミリアリアがフラガのバカでかい声にきゃっと小さく叫ぶ。
一方ハンガーでは一機残ったスカイグラスパーの前をウロつくカガリとマードックの攻防戦が行われていた。
「おいおい!こいつは出られねぇぞ!」
マードックは両手を広げて通せんぼするような格好で言った。
「あんたはチョロチョロしない!」
「ちぇ!」
カガリはブスくれて未練がましく去っていった。

「カーペンタリアの奴か!」
バリアントを避けながらディンは身軽に飛び回った。
フラガはスピードで勝りながらも、複雑な動きを可能にし、水平面以外からの攻撃を得意とするディンを追い詰めることができずにいた。
機関砲を撃ちながら後を追うが、なかなかの手練れらしく、縦に横にと飛び退りながらかわしていく。 
「ソナーに感あり!4、いや2」
ブリッジではつけたばかりのソナーに敵機を見たトノムラが報告する。
「このスピード…推進音…モビルスーツです!」
「水中用モビルスーツだと!?」
ナタルが思わず立ち上がった途端、再びトノムラが叫んだ。
「ソナーに突発音!」
「魚雷だわ!かわして!」
マリューはノイマンに回避を命じたが、ノイマンは距離を見て判断を下した。
「間に合いません!離水を!」
「許可します!」
ノイマンは素早くパワーを最大に上げると、アークエンジェルはいきなり艦首をもたげた。
「うわっ!何やってやがん…」
マードックが突然斜めになった艦体に驚き、咄嗟に傍のケーブルを掴んだ。
整備車両や整備台から落ちた工具類があたりに散乱し、兵たちは身の安全を図ろうと大慌てだ。
「うわわ…っ!」
マードックに追い出されて廊下を歩いていたカガリも、バランスを崩して壁際に背を向け、手すりに掴まっていた。
あちこちで派手に物が落ちる音がする。
戦闘配備中に役割のないフレイはといえば、キラの部屋で落ちてくる物を避けながらうずくまっていた。

「チッ、浮上したか!ならば!」
2機のグーンはザバッと水から顔を出すと、離水したアークエンジェルの艦底めがけて魚雷を放った。
アークエンジェルは唯一艦底に向けて射線の取れるバリアントでグーンに、上空のディンにはイーゲルシュテルンで応戦するも、機動性の差は如何ともし難い。
しかも厄介な事に、ディンはゴットフリートの射線が取れない位置に廻りこんだ。
艦上からフラガの援護をしていたストライクは、傾いた艦体でバランスを取って耐えると、後方へ向かうディンにライフルを向けたが、うまく射線が取れない。
(これじゃ位置的に援護すらもままならない)
キラはパチッと通信スイッチを入れると、マードックを呼び出した。
「マードック曹長!」
「なんだぁ!?」
マードックは散乱したケーブルを担ぎあげながらインカムに怒鳴った。
「第8艦隊からの補給にバズーカがありましたよね?」
「ああ?あったが…どうした?」
「用意してください!使います!」
キラが各部位の気密を調節しながら海に降りると言うと、マードックは「はぁ!?」とますます大声で怒鳴った。
「降りる!?降りるったって、ストライクはな…」
「わかってます!でも、なんとかしなきゃ!」
ディンはフラガに任せて、自分は下のグーンを狙うつもりだった。

「ストライクが海へ入る!バリアント、あてるなよ!」
(またそんなムチャを…)
ナタルの言葉にノイマンは心の中で愚痴りつつ、ランダム回避を続けている。
フラガは艦砲射撃を避けながら再び戻ってきたディンを追い、キラは艦上に現れたバズーカを受け取ると、思い切って「ええい!」と海に飛び降りた。
「う…速い!わっ…!」
思った以上に速い潮の流れに機体を持っていかれそうになる。
(穏やかそうに見える波の下が、こんなに激しいなんて…)
「ふん!宇宙用の機体で!」
砂漠に下りたばかりの頃のように、モタモタと溺れたような動きをしているストライクを見て、パイロットが笑った。
異形のモビルスーツ、グーンの流線型の体は水の抵抗を受け流し、素早くストライクに忍び寄る。
「水中のグーンに勝てるものか!」
キラは必死に機体を立て直そうとしたのだが、結局遠浅の底まで来てしまった。
そこでようやくバズーカを構えると、思い切り海底を蹴る。
「だぁっ!!」
「うっ!?」
思った以上の推進力で浮き上がってきたストライクにグーンがひるみ、キラは機を逃さずバズーカを放ったが、水の抵抗で素早いグーンには避けられてしまう。
(潮流と抵抗を計算に入れて、プログラムの書換えを…)
キラは慌てて照準プログラムを合わせた。

上空ではディンとスカイグラスパーのドッグファイトが行われていた。
フラガが持ち前の勘のよさでヒット・アンド・アウェイで離れると、そこにバリアントとウォンバットが降り注ぎ、ディンを直撃する。
(俺たちもなかなか息が合ってきたな、中尉さん)
こちらの動きを読み、その間隙を縫って砲撃を浴びせるナタルの腕は、歴戦の兵であるフラガも、これまで出会った戦闘指揮官の中で随一だと認めている。
ディンはもともと極端な軽量化を図っている機体なので、耐弾性は驚くほど低い。薄い装甲には、致命傷ではないものの、早くもボコボコと穴が空いていた。
「ええい!グーン隊は何をやっている!」
初めは離水した足つきに顔を出して魚雷を発射していたのに、さっきからグーンの水面上への攻撃がほとんど行われていないことにモラシムは苛立っていた。
(ちっ…ナチュラルの機体などにてこずっているということか)

レーザーで狙われ、フォノンメーザー砲が放たれるたびにキラはバズーカを構えたまま避けたが、やはり機体の動きが鈍い。
「逃がすか!」
ストライクが後ろに下がった途端、相手がひるんだと見たグーンはすぐさま近づいてきた。
キラはバズーカを離すと、無意識に腰のアーマーシュナイダーを取り出した。
そして向かってきたグーンに自ら向かっていくと、そのまま機体に取りつき、もがく相手の腹部にナイフを突き立てて仰向けの姿勢から蹴り飛ばした。
離れていった機体がやがて爆発し、キラは海底まで一気に潜ると、先ほど手放したバズーカを拾う。そして向かってきたもう1機のグーンを待ち構えた。
「ハンスのグーンもやられたか…一旦退く!」
グーンを2機仕留められ、モラシムは撤退を命じた。
(地球軍のモビルスーツが…ここまでとは)
彼ら自身もモビルスーツと戦うのは初めてとはいえ、これまで海では無敵を誇った部隊としての絶対的な自信を打ち砕かれ、モラシムはギリギリと歯を食いしばった。
「ラウ・ル・クルーゼめ…とんでもない化物を押しつけおって!」

キラはバズーカの直撃を受けて爆発した2機目のグーンの残骸が海底へと沈んでいくのを見送り、海中から明るい空を見上げた。太陽がゆらゆらと歪んで揺れている。
(今の世界は、こんな風に輪郭がはっきりせず、歪んでいるんだろうか)
キラは眩しい海面を見上げながら眼を細めた。
(相手が自分と違えば憎みあって、相手が何者なのかすら知らずに殺しあう)
そんな殺伐とした世界でいいわけがない。ましてやナチュラルもコーディネイターも、能力に違いがあるとはいえ同じ人間なのだ。

「わかってるけど…でも…やらなきゃ私たちは…」

キラは頭を振って、海上へと向かった。
歪んだ世界でも、自分たちは、そこでしか生きられない…

「ニコル」
アスランが前を行くニコルの姿に気づいて声をかけた。
「あ、アスラン!この間はありがとうございました」
ニコルはその声に気づいて振り向くと、すぐに礼を言った。
休暇中に故郷のマイウス市で親戚や友人のための小さなサロンコンサートを開いたニコルは、意を決してアスランを招待したのだ。
「いいコンサートだったわね」
ニコルは、花束を持って現れたアスランの姿を思い出して嬉しそうに笑った。
ラクス・クラインの婚約者と気づかない友人たちは、誰よりも美しい彼女を見て色めき立ち、「誰?」「きみの恋人なの?」と大騒ぎだった。
「ほんとは、もっとちゃんとしたのをやりたいんですけどね」
「今はね。このオペレーション・スピットブレイクが終われば、情勢も変わるだろうから」
2人はにこやかに話しながらゲートに向かう。
彼らはこれからイージスとブリッツで降下ポッドに乗り込み、ジブラルタル基地への降下を行うのだ。
「僕、降下作戦初めてなんです」
忙しなく準備の進むハンガーを見ながら、ニコルが少し緊張した声で言うと、アスランが可笑しそうに笑った。
「私だってそうよ」
ニコルも自分たちが同期であることを思い出して「あ、そうか」と苦笑した。
「でも、砂漠ではかのバルトフェルド隊が足つきに敗れたとか…」
それを聞いてアスランの表情がふっと曇った。
キラがいる限り、あの艦が落ちることはないと思えた。
「イザークとディアッカ、無事にジブラルタルに戻ってるでしょうか」
「大丈夫よ。あの2人のことだもの」
そう答えながら、アスランが考えていたのは仲間のことではなかった。
(キラは一体どこまで強くなるのだろう…私たちの…「敵」として)

何かに心を奪われたアスランを見つめ、ニコルはまた少し寂しくなった。
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制作裏話-PHASE22-
怒涛の展開だった1クールに比べると、どうしても間延び感が否めない2クールですが、ストライクの戦いっぷりは楽しいです。
海でも強いぞストライク!アーマーシュナイダー最強説は揺るがないぞストライク!
またそれだけではなく、本編にはなかったのですがバズーカを担いで海に入ったキラが潮流と水の抵抗を計算に入れて、またしても射撃パラメータを書き換えていくというスーパーコーディネイターぶりを見せる…という描写を入れていますが、「訓練すればね」と言いながら実際は易々やってのけてしまうというのは皮肉めいてますね。

そんな2クールを救済しようと、このPHASEのラストはDESTINYという種以下の駄作が生まれるまでは「なんだったんだあの最終回は!」と言われ続けたキラ・ヤマトの名言、「僕たちの…世界は…」に対応する伏線を張っています。

戦闘に勝利したものの、虎との戦いや、フレイとの関係に虚しい気持ちを埋められずにいるキラが、海の中から見上げた世界はゆらゆらと揺らいでいる…というもの。そんな世界であっても、愛する人たちがいる世界なら守りたいと思えるようになるのが、逆種でのキラの成長に繋がります。
これは意外と後々までキラの心に残るものとなり、逆デスでも「世界の歪み」を象徴するシーンとして思い出させる事ができました。

本編ではクルーゼに口喧嘩で勝てず、いきなり「守りたい世界がある」と言い出した主人公にドン引き最終回だったので、逆種ではそのへんを早くから補完しています。
ハルバートンや虎、そしてこの後シーゲル・クラインやラクス、ウズミと出会う事で、「世界」「戦争」「対立」の構図をキラ自身がきちんと捉え、考えていくようにしたつもりです。

そしてキラとカガリのハグには、こちらも互いに不思議な感覚を覚えた、と伏線を張っておきました。
キラとカガリの双子設定については、尺が足りなくなった本編よりもう少しきちんと描きたいと思っていたので、PHASE46で目覚めたキラを見守っているのは、本編ではラクスですが逆転ではカガリにしてあります。
でも、実はこの「双子の絆を書いておきたかった」のも逆デスを見越してのことなんですけどね…

キラとカガリの会話は、あまり小難しくはせず、仲のいい兄妹がとりとめもなく話している、という雰囲気を作り出すようにしました。その方がキラも救われるのではないかなと思ってのことです。
また同時に、カガリもこの時点ではあくまでも「政治家の子」でしかありませんから、そこまで確固とした考えがあるわけではありません。けれどカガリがナチュラルとコーディネイターに隔たりを感じていないのは当然で、オーブという土壌で、頑固ではあるけれどカガリを慈しんで育てたウズミなら、オーブの思想を息子に引き継がせているだろうと示唆しています。
彼が成長していくのはこれからなので、この時点ではラクスに次いでキラの想いを傾聴してくれた人という印象にしています。

一方でキラはフレイの与える安らぎにどっぷりと浸かっています。一時的な慰めではあるのですが、この時点ではキラにとってフレイだけが心の支えでした。(ガンダムでの不純異性交遊はBPOに怒られちゃいますぞ!)

宇宙ではアスランとニコルが再登場し、ジブラルタルに向かいます。この頃はホント、アスランの出番がなくて話の進みもカメの如きのろさでしたね。
しかし私はといえば、「いよいよカガリとアスランの出会いが近づいてきた。果たしてうまく書けるだろうか」と、意気込むと同時にやたら緊張しまくってました。
だってキラが絶望と共に考えていた、互いが何者なのかを知りもせずに殺しあうこと…これを体現するのがPHASE23から24のアスランとカガリなんですから、そりゃ緊張もします。キラにこう考えさせた事で敢えてハードルも上げてますしね。

ちなみに逆種のアスランは、本編と同じく「鈍感な朴念仁」ではありますが、優等生の女の子なのでニコルのコンサートで居眠りしたりしてませんよ!
になにな(筆者) 2011/03/10(Thu)00:27:08 編集



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