忍者ブログ
Natural or Cordinater?
サブタイトル

お知らせ
PHASE0 はじめに 
PHASE1-1 偽りの平和①
PHASE1-2 偽りの平和②
PHASE1-3 偽りの平和③
PHASE2 その名はガンダム 
PHASE3 崩壊の大地
PHASE4 サイレント ラン
PHASE5 フェイズシフトダウン
PHASE6 消えるガンダム
PHASE7 宇宙の傷跡
PHASE8 敵軍の英雄
(原題:敵軍の歌姫)
PHASE9 消えていく光
PHASE10 分かたれた道
PHASE11 目覚める刃
PHASE12 フレイの選択
PHASE13 宇宙に降る星
PHASE14 果てし無き時の中で
PHASE15 それぞれの孤独
PHASE16 燃える砂塵
PHASE17 カガリ再び
PHASE18 ペイバック
PHASE19 宿敵の牙
PHASE20 おだやかな日に
PHASE21 砂塵の果て
PHASE22 紅に染まる海
PHASE23 運命の出会い
PHASE24 二人だけの戦争
PHASE25 平和の国へ
PHASE26 モーメント
PHASE27 果てなき輪舞
PHASE28 キラ
PHASE29 さだめの楔 
PHASE30 閃光の刻
PHASE31 慟哭の空
PHASE32 約束の地に
PHASE33 闇の胎動
PHASE34 まなざしの先
PHASE35 舞い降りる剣
PHASE36 正義の名のもとに 
PHASE37 神のいかずち
PHASE38 決意の砲火
PHASE39 アスラン
PHASE40 暁の宇宙へ
PHASE41 ゆれる世界
PHASE42 ラクス出撃
PHASE43 立ちはだかるもの 
PHASE44 螺旋の邂逅
PHASE45 開く扉
PHASE46 たましいの場所
PHASE47-1 悪夢はふたたび①
PHASE47-2 悪夢はふたたび②
PHASE48-1 怒りの日①
PHASE48-2 怒りの日②
PHASE49-1 終末の光①
PHASE49-2 終末の光②
PHASE50-1 終わらない明日へ①
PHASE50-2 終わらない明日へ②
ブログ内検索
機動戦士ガンダムSEED 男女逆転物語
[48]  [52]  [54]  [56]  [57]  [58]  [59]  [60]  [61]  [62]  

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「ジェネシスは、連射がきかないのが唯一の救いです。おそらく、一射毎にこのミラーを交換しなければならないのでしょう」
エリカ・シモンズはジェネシスについて、さらなる分析に基づいた説明を続けていた。

拍手


ジェネシス本体にはフェイズシフト装甲が施されており、その前には鉄壁を誇る要塞ヤキン・ドゥーエがある。ジェネシスに近づくためには当然ヤキンの防衛線を突破する必要があるが、防衛に死力を尽くすはずのザフトを相手にして易々と突破できるはずがない。
また、確かに連射は利かないとはいえ照準ミラーの換装にさほど時間がかかるとも思えないと、エリカは冷静に分析して言った。
「第二射を撃つ構えがあるからこその第一射だったのではないかと」
「二射目の照準は月か、それとも…」
考え込むバルトフェルドに代わり、キラが尋ねた。
「地球軍は、また核を撃ってきますよね?」
「…ええ」
その問いにマリューはためらいながら答えた。
「私たちの相手は、ザフトであり、地球軍でもあるということね」
その絶望的な状況にあっても、もはや誰も泣き言は言わなかった。
「地球軍艦隊、進撃を開始します」
やがてマリューの映像に並び、モニターにミリアリアの姿が映し出された。
地球軍の残存部隊と月基地からの増援部隊が合流し、進撃を始めたのだ。
「連中も退かない気だ」
「退きたくても退けないんだろう。あれを見てしまったら」
カガリが腕を組んで苦々しげに言うと、ラクスが硬い声で答えた。
もはや一刻の猶予も許されない。
核か、ジェネシス…撃たれるのは時間の問題だ。
キラとアスランは顔を見合わせると頷きあった。

話し合いが終わると、シモンズは「データを残していきますわ。若様はどうぞお先に」と言い、カガリはキラとアスランと共にブリッジを出ようとした。
するとシートを離れたラクスが彼らに追いついて言葉をかけた。
「キラ、アスラン、カガリくん…皆、どうか気をつけて」
それからラクスは再度キラを呼び止めた。
「キラ」
キラは振り返り、ラクスに手を取られた。
先にエレベーターに乗り込んだアスランは、頷いたラクスに促され、立ち止まったカガリを呼ぶとそのまま扉を閉めた。
カガリは2人を置いて来た彼女に少し驚いたが、アスランは特にいつもと変わったところもなく、黙って階数表示を見つめている。
「…おまえさ」
やがてカガリがためらいながら話しかけた。
「ラクスと…ちゃんと話した方がいいんじゃないのか?」
「え?なぜ?」
アスランは面食らったような顔でカガリを見つめている。
カガリは黙っていようと思っていたのに口に出してしまったことを少し後悔しながら、いつもの彼らしくないボソボソした声で続けた。
「だから…キラに遠慮しなくても…」
「…遠慮?何を?」
アスランはますますいぶかしみ、首を傾げている。
本当に何もわかっていない様子の彼女に心の中でため息をついているとそのうち扉が開いたので、カガリはこれ幸いと先にカーゴから出た。
「ああ、まぁ…いいんだ。悪い。じゃ、またな」
「…え?ちょ…待って、カガリ!」
話の途中で行ってしまいそうになるカガリを、アスランは引き止めた。

ラクスは少し黙り込み、やがて小さな声で「ごめんね」と言った。
キラは自分の手を優しく握っているラクスの手を握り返すと、にっこり笑った。
「どうして?」
「きみを巻き込んだのは、僕だから…」
戦艦の片隅で泣いていた小さな女の子の命を助けた事は、後悔していない。
けれどあのまま戦いから、戦場から離れる事もできたはずの彼女に、フリーダムを渡し、再び戦火に身を投じさせたのは自分だと思う…
「そんな事ないよ」
キラは首を振った。
「決めたのは、私自身。ラクスは教えてくれただけだよ」
助けてくれたマルキオ導師にも、シーゲルさんにも感謝してるとキラは言った。
「戦争に加担する事はもちろん、ただ言われるままに戦う事も…それに、知らん顔して逃げたり、黙って受け入れる事も、皆間違ってるんだって」
キラの胸にはアスランと命懸けで戦った事、命を救われ、大切な人たちを守れた事、そしてもう一度、友達と話し合え、わかりあえた事が去来した。
「あの時教えてもらったから、今こうして、皆と一緒に戦えてる」
「だから、もう迷ってないよ」と言うキラの頬に、ラクスは優しく触れた。
「昔ね」
キラはさして昔でもないことを懐かしそうに思い出した。
「ある人が言ったんだ。力があっても、それだけじゃダメだって」
キラはハルバートンの言葉を思い出していた。
「意志のない者には、何もやり抜くことはできないって…」
ラクスは黙ってキラの言葉を聞いている。
「ずっと、皆を守るために仕方がないんだと思ってた」
でも力があるから、できるんだからと言われても、どうして自分だけと思うたびにやりきれなくて、哀しくて、いつも孤独だった…
(気持ちだけで、一体何が守れるっていうんだ!)
だから「守る」という言葉を使ったカガリを引っぱたいたりもした。
「でも今は、あの時よりもっとずっと強く、皆を守りたいと思うよ」
キラはそう言って壮絶に散った頑固そうな准将の姿を思い出した。
(もしあの人が今の私を見たら、意志があると認めてくれるかな…)
「それに、あの時ラクスも言ったよね」

―― 想いだけでも…力だけでもだめなんだ。

それを証とするために、フリーダムに、自分の剣に想いを乗せて、ここまで来た。
「ラクスがいてくれたから、私は今、戦える」
そうか…とラクスは納得した。
意志をもって戦うキラはきっと、誰にも負けはしない。
(強くて優しい、僕の大切な戦士)
「僕も、きみに会って進むべき道を決められた。だから、ありがとう」
ラクスはそう言うと、キラの小さな体を抱き締めた。
「私も、ありがとう」
キラは、薬の香りが残る温かい彼の胸に顔を埋めた。
「帰っておいで、必ず。僕のところに」
「…うん」
キラは頷いた。
(帰れるなら…帰ってきたい。そして皆と一緒に生きていきたい)
「ラクスも気をつけて」
キラはそう言うと、ラクスの頬にキスをした。
ラクスもまた、お返しにキラの頬にキスをする。
「わかった。約束だよ」
「うん、約束」
キラは可憐に笑い、2人はまた抱き合った。

「待ってったら!」
「ぅわっ!」
アスランはカガリのジャケットの裾を掴んで彼を止めると、前に回りこんで進路を塞いだ。おかげでバランスを崩したカガリは天井を蹴って戻ってきた。
「バカ、何するんだ!」
「そっちこそ、何を言ってるの?キラに遠慮って、何のこと?」
アスランの矢のような問いかけに、カガリは困って眼を泳がせた。
鈍感なくせに、こういうところは変に真面目で手に負えないと思いながら。
「いや…えーと…あっ、そうだ!エリカが、パーツのまま持ってきたストライクRの調整がさ、どうにか間に合ったんだよ、やっと…!」
見え見えのごまかしだったが、カガリはつい最近クサナギで組みあがった新たなモビルスーツの名前を出した。ストライクとは全くの同型だが、防御を重視したプログラムがなされているため装甲がより堅固になっている。
反面、フラガが乗るストライクより機動性はやや落ちるのだが。
「ストライクR?」
恐らく、キラがクサナギに呼ばれて調整を手伝っていた機体だろう。
急に始めたモビルスーツの搭乗訓練といい、その可能性に思い当たったアスランは、疑るような眼でカガリを見ると訊ねた。
「…まさか、あなたが乗るんじゃないでしょうね?」
「いや、乗らないって!仮にも指揮官だぞ、俺は…」
カガリは慌てて否定した。
「アサギかジュリか…あいつらの誰かが乗る事になると思う」
それでも納得いかないようなアスランを見て、カガリはしぶしぶ呟いた。
「そりゃ、ホントは俺だって、おまえたちだけに戦わせるのはいやなんだ」
カガリは思わず何か言いかけたアスランを遮るように言った。
「特におまえには…相手…親父さんだろ?」
その言葉がアスランの胸にズキリと刺さり、カガリもまたそれに気づいてなんとなく視線を外した。
父親と戦うなど、もし自分だったらと思うと耐え難いものがあった。
「おまえの気持ちはわかるなんて、俺には言えない。だけど…」
アスランは黙ったまま聞いている。
「できること、望むこと、すべきこと…みんな同じだろ?」
カガリはそっぽを向いたまま、呟くように言った。
「おまえも、キラも、ラクスも…俺だってさ」
「…できること、望むこと…すべきこと…」
アスランは彼の言葉を反芻し、唇を噛んだ。
父と訣別し、何もできない、何もわかっていないと思い知った自分にも、まだできる事はあるのだろうか。父と、もう一度話ができるのだろうか。
(私たちは本当は何と、どう戦わなくちゃいけなかったの?)
それにあの時探そうと決めた答えを、自分はまだ何も見つけていない。
「戦場を駈けてもダメなこともある。でも、今はそれが必要だろう」
カガリはアスランの方に向き直った。
それはあまりにも真っ直ぐな視線だった。
「だからおまえとキラに託す。そして俺は、俺のすべきことをする」
「カガリ…」
「ラクスもきっとそうだ」
しかしそこまで言うと、カガリは急に引きつったように笑おうとした。
「だからさ、おまえも…ちゃんと話せよ…ラクスと」
彼のそんな表情の意味がわからず、アスランは黙りこんだ。
「別に、まだホントに、ダメになったってわけじゃないんだろ?」
「え…」
筋金入りの鈍さを持つアスランも、さすがにカガリが何を言いたいのか気づいたようで、一瞬息を呑み、それから少し呆れたように彼を見た。
「前に振られたかもしれないけど、望みが…ないわけじゃないと思うぞ」
「あれは…!」
「だってあいつ、具合が悪い時はいつもおまえの事呼ぶし、それに…」
そこまで言いかけて勝手に傷つき、カガリはブスっとして顔を背けた。
(いつも抱き合ったり、手や頬にキスしたりしてるじゃないか…)
今度は突然黙り込んだ彼を、アスランはきょとんとして見つめている。
「…死なせないから、おまえ」
しばらくして、カガリは怒ったように言った。
こんな事で彼女に不機嫌な顔を見せてしまった自分が恥ずかしく思え、照れ隠しの気持ちが逆に、ぶっきらぼうな口調にさせてしまった。
「妹…かもしれない、あいつも」
「妹?」
それを聞いて、アスランは思わずくすっと笑った。
「姉さん…じゃなくて?」
「まさか!ありえない!あるわけないだろ!」
カガリは急に元気になって力強く否定し、「絶対あいつが妹だ!それ以外、俺は認めない!」と断言した。
アスランは「そうかな」と答えてふふっと笑った。
そんな事でむきになる彼の子供っぽさが微笑ましかった。

「カガリ」
「ん?」
アスランはカガリの腕に触れると言った。
「カガリに会えて、よかった」
今度はカガリがきょとんとする番だった。
(え…?だって、おまえは…)
けれど目の前で微笑んでいるアスランを見た途端、カガリは考えるより先に彼女を抱き寄せていた。気にしていたラクスの事など吹っ飛んでしまった。
もう我慢なんかしないし、遠慮もしない。そんなことできるはずがなかった。
細い体を強く抱きしめると、アスランもカガリの背に腕を回してきた。
長い藍色の髪が心地よく香り、彼女の温もりが胸を通じて伝わってくる。
激し過ぎる自分の心臓に落ち着けと思ったが、そんなことでは収まらない。
「あなたは…私が守るわ」
やがてアスランが小さく呟いたので、カガリは少し腕の力を緩めた。
碧の瞳が自分だけに向けられ、桜色の唇は優しく微笑んでいる。
何もせずにいられた今までが嘘のように、彼女への想いがあふれ、一杯に広がった。
「それって…俺のセリフじゃないのか?」
カガリは明るく笑って、ようやく想いが通じた美しい少女に唇を重ねた。

「ベルナール戦闘軍、フォーメーション・ノーチラスにてアルファセッターに展開せよ」
ヤキン・ドゥーエの防衛網が死角なく張り巡らされる。
先陣を切るドミニオンがその防衛網を確かめるべく、主砲を放った。
「スレッジハマー装填。ゴットフリート照準。撃ぇ!」
主砲は避けられ、同時にナスカ級の収束砲が火を噴き始める。
「両軍、戦闘開始しました」
ミリアリアが告げると、サイもまたライブラリを起動する。
アークエンジェルの発進準備は整ったが、まだ艦長席が空席だ。
マリューがどこに行ったのかは、ブリッジでは皆、暗黙のうちに了解していた。
(会いたい人がいるなら…会えるのなら、会っておいた方がいいさ)
ノイマンは発進シークエンスを進めながら、かつての上官を思い出していた。
プラントに核を撃ち、ジェネシスに撃たれ、あの人は最終局面を迎えたこの戦いをどう考えているんだろう…ノイマンはふと苦い笑みをこぼした。
(賢い彼女のことだ。俺たちが闘う理由にはもう気づいているだろう)
なのに今、共に戦えないことを、ノイマンは少しだけ残念に思っていた。
同じように、サイもまたドミニオンのことを考えていた。
もしかしたらそこに乗っているかもしれないフレイのことを。
けれど、臆病だった彼のことだ。
カズイのように戦うことを放棄して、今はもう地球にいるかもしれない。
そして心のどこかでそれを願っている自分に気づいて苦笑した。
戦わなくて済むのなら、それが一番いい…キラがいつも言っているように。
(あなたとは戦いたくない。だって、あなたは私の敵じゃないもの)
どうか、地球にいて。そうすれば私は、地球を守るために戦えるから。

エターナルでもクサナギでも、着々と発進準備が進行中である。
「ジェネシスと核と、戦いながらどっちも防げったってさぁ」
早々と準備の整ったバスターのオペレーションをしていたミリアリアは、コックピットでブツブツぼやいているディアッカを見て、「じゃ、やめれば」と言い捨てると、いきなりブツッとモニターを切ってしまった。
これにはさすがにディアッカも驚いて、
「え!?あ、おい…」
とモニターに身を乗り出し、慌てて彼女に呼びかけた。
(そりゃないだろ?)
優しい言葉をかけてくれなんて言わないからさ…ディアッカは相変わらず冷たい彼女にガッカリする。
すると、しばらくして再びモニターがついた。
ディアッカはそこに映し出された、少し気まずそうな彼女を見つめた。
自分でも少々情けねぇと思いつつ、顔がほころぶのは止められない。
「嘘よ…ごめん…」
ミリアリアは眼を逸らしたまま言った。
命がけで戦いに行く人に、あんな事を言ってはいけなかった。
(いくら、こいつならきっと帰ってくるに違いないと信じていても…)
会えなくなったらもう何も話せないし、喧嘩することもできないのだ。
自分がいくら冷たくしてもへこたれず、いつだって明るく話しかけてくる彼の姿を、最近はどこででもまず最初に探してしまう事にも気づいていた。そんな風にディアッカの存在感が日に日に増し、それが自分を苛立たせている。
彼女の心を縛る鎖は緩んできてはいたが、まだ完全に解けてはいなかった。
「気をつけて」
ミリアリアは呟いた。それは紛れもない、本心からの言葉だった。
ディアッカはそれを聞いて嬉しそうに眼を細めた。
「サンキュ」
ミリアリアはそれを聞いて思わずディアッカを見つめた。
2人の視線が一瞬だけクロスし、ほんの少し、微笑みあえたような気がした。

「核を持った別働隊がいるはずだ!そいつを探せ」
先陣を切って出撃準備に入ったエターナルでは、バルトフェルドがキラとアスランにいくつか座標を示してあたりをつけた。
「おまえたちならやれる。頼んだぞ」
そして彼もまた密かに、首にかけた小さなロケットを開いた。
そこには黒髪の美しい女性が微笑んでいた。
自分に命を譲ってくれた彼女の元に向かう覚悟は、とっくにできている。
バルトフェルドは物言わぬ愛する彼女に微笑みかけた。
(わかるだろう?あいつらがやろうとしている事を、手伝ってやりたいんだ)
「妬けるわね」と朗らかに笑った彼女の声が胸に蘇ってくる。
バルトフェルドはロケットを閉じ、強く握り締めた。
(すまんな、アイシャ。もう少し待っていてくれ)

「そりゃあ!滅殺!」
クロトがジンを追い詰め、アフラマズダで爆発させた。
フォビドゥンはフレスベルグでゲイツを、PS装甲のないジンをニーズヘグで切り裂き、艦砲射撃で撃ちかけてきたローラシア級に向かっていった。
オルガはその後ろからシュラークをぶっ放し、近づいたジンを捉えてスキュラでコックピットを吹っ飛ばしている。
後方で出撃のチャンスを窺っているピースメーカー隊の突破口を作ることが彼らの任務だったが、さすがにヤキンの防衛網は厚い。
(長く楽しめていいけどなっ!)
オルガはゲイツの足や腕をふっ飛ばしながら「彼ら」を待った。

「間に合わないかと思った」
「マリュー!?」
出撃シークエンスが開始されているのに、なんでこんなところに…と、フラガはかぶりかけたヘルメットを下に降ろしてマリューを見た。
「何にだよ、バカ」
彼女を受け止め、フラガはコツンと彼女の額を小突いた。
「今会っておかなきゃ2度と会えない…みたいな言い方しなさんな」
よほど慌てて来たのだろう、マリューの首元からはペンダントが飛び出している。
前々から気づいていた。
それは恐らく、彼女が大切に想っていた男に関するものだ。
マリューはそれに触れたフラガを見て、しまった…と思う。
誰だって、前の恋人の影など、あまりいい気はしないだろうに。
しばらくそれを見ていたフラガは、優しい眼で微笑んだ。
「モビルアーマー乗り…だった?」
彼女がモビルアーマー乗りが嫌いだと言ったのは、帰ってこなかった彼に、失った恋にひどく心を痛めたからだろう。
「…ええ」
マリューは居心地が悪そうに眼を逸らした。
(せっかく会いに来たのに…なんてバカな事をしてしまったのだろう…)
「大丈夫。俺はすぐに戻って来るさ」
フラガは明るく笑った。
任務を放り出して会いに来てくれた彼女の気持ちを、無碍になんかするもんか。
フラガは彼女の腰を抱き寄せた。
「勝利と共にね」
そして2人はくちづけを交わした。何度も何度も。
もう2度と、愛する人と別れることがないように。
そして…愛する人を忘れてしまうことがないように…

やがて、ジェネシスの照準ミラーブロックの換装が終了した。
「目標点入力。月面プトレマイオスクレーター、地球軍基地」
ザラ議長が目標点を伝え、オペレーターが座標を入力する。
「奴らの増援艦隊の位置は?」
議長は増援部隊ごと月基地を吹き飛ばすつもりだった。
それはナチュラルどもの心を砕くだろう。
「グリーンアルファ5、マーク3であります」
(我らの勝ちだな、ナチュラルども!)
ジェネシスは全てを焼き尽くす。完膚なきまでに。
それでもなおひれ伏さぬというのなら、今度は地球を討つまでだ。
「第七宙域、突破されます」
やはりレイダーやカラミティ、フォビドゥンがいる宙域だ。
勢いに乗り、モビルスーツ部隊が徐々に防衛網を突破しつつある。
「あとわずかだ。持ちこたえさせろ」
議長はそれすらも些事とばかりに言い捨てた。
「では私も出ましょう」
「クルーゼ。これ以上の失態、許さんぞ」
ザラはジロリとクルーゼを睨んで言った。
「エターナルを討てず、あんな連中を野放しにしているのはおまえの責任でもあるのだぞ」
議長は忌々しそうに怒りをぶつけた。
「奴らにプラントを討たせるな!」
クルーゼは冷静だった。
鉄面皮のパトリックの動揺を誘う言葉もよくわかっている。
「アスランを討つことになってもよろしいので?」
「なっ…」
ザラはクルーゼの思いもかけない反撃に一瞬言葉を失った。
「…構わん!」
「了解しました。では」
クルーゼが下がって1人になると、ザラはデスクに眼を向けた。
そこには妻と娘の写真が、彼にとって幸せだった時代があった。
(世界はもう、変わるべきなのだ!)
パトリック・ザラは歯を食いしばり、再びモニターに眼を移した。
「…おまえにはなぜそれがわからんのだ、アスラン…!」

「オレンジ25、マーク12、アルファにドミニオンです!」
マリューが艦長席に戻り、アークエンジェルも発進した。
同時に各艦からモビルスーツが発進する。
「ムウ・ラ・フラガ、ストライク、出るぞ!」
「ストライク、発進どうぞ!」
「ディアッカ・エルスマン、バスター、発進する!」
「バスター、発進どうぞ!」
彼女たちの想いに守られて、男たちは戦場に飛び出した。
アスランはジャスティスのパワーを上げていく。
(父上…私は身を呈してでも、あなたを止めなければなりません)
手遅れになるまえに。世界が終わってしまう前に。
「アスラン・ザラ、ジャスティス、出ます!」
そして、カガリとの約束を守るために…

「理論はおわかりと思いますが」
その頃、クルーゼは新型のZGMF-X13Aプロヴィデンスのコックピットにいた。
(使ってみせるさ。あの男にできて私にできないはずはない)
有線ガンバレルを自在に使いこなした不肖の息子に、父が劣るはずがない。
「ラウ・ル・クルーゼだ!プロヴィデンス、出るぞ!」
ドラグーンシステムを背負った忌わしい機体が発進すると、ジェネシスもまた、二射目の発射準備に入った。

キラは瞳を閉じていた。
戦争は、ついにこんなところまで来てしまった。
ねじれた想い、歪んだ世界…だけど、それでも…

―― コーディネイターだからって、本気で戦ってないんだろう!

(フレイ…私は、戦うと決めた。もう逃げないと決めた。でも、私の敵はコーディネイターでもナチュラルでもない)
それは、戦いを終えられないすべての人の憎しみと、怒りだ。

ジェネシスの射線上からの撤退が命じられ、全軍が退いた。
ドミニオンのナタルとフレイは、再び悪魔の光が放たれると直感していた。照準は、自分たちか、月か、それとも…
(キラ…)
フレイは、今まさに出撃せんとする少女の名を呟いた。

「キラ・ヤマト、フリーダム、行きます!」
ザラ議長は冷静なまなざしで再起動したジェネシスを見つめていた。
一射目にはそれでもわずかに残っていたためらいが、既にない。
バルトフェルドの言葉どおり、人はすぐ慣れてしまうのだろうか。
戦いにも、殺し合いにも…
彼にとってもはやジェネシスは特別なものではない。
それは、未来を切り拓く始まりの光だった。
「発射!」
やがて月が悲鳴を上げ、その身をよじって購いの血を噴いた。
戦争は暴走をはじめ、もはや先には真っ暗な混沌だけが待っていた。
PR
この記事にコメントする
Name
Title
Font-Color
Mail
URL
Comment
Pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

secret
制作裏話-PHASE48②-
種の最終カップリングが決定した回です。
キラとラクス、アスランとカガリ、マリューとフラガ、そしてディアッカとミリアリアですね。

私の中では本編の最終回後、監督が語った「キラとラクスの間に恋愛感情はなく、あるのは同志とか家族のような絆。キラが好きなのは最初から最後までフレイ」というのがピッタリだったため、逆種・逆デスともそれを貫きました。(むしろなんであの2人がDESTINY本編であんなバカップルになっちゃったのかわからんわ)

だからラクスとキラのシーンでは、恋愛っぽさはなく、戦うことの意味が重要なファクターになっています。ここで逆種ではかなり意識的に使ってきたハルバートンの言葉も昇華します(本編ではもちろん出てきません)

力があってもそれだけではダメだと言ったハルバートン。
カガリに「想いだけで何が守れるって言うんだ」と言ったキラ。
そして「想いだけでも、力だけでもだめなんだ」と言ったラクス。

この結論に達する事がキラの主人公としての役割でもあると思って書いてきたので、ここできちんとまとめられたのはちょっとほっとしました。
キラにとっては、ラクスはまさにお兄さんですね。ラクスにとってもキラは自分を勇気づけ、後押ししてくれる大切な存在です。お互いに恋愛対象じゃないけど。
というか、ラクス・クラインは男女間の恋愛などに縛られないキャラクターとして描いたつもりです。

同時に、出撃の時にキラはラクスではなくフレイを想い、フレイもまたキラを想っています。最終回と同時に彼らの物語…種のテーマでもある「ナチュラルとコーディネイターの物語」が結末を迎えるんですから、これが当然ですね。

フラガとマリューは既に38話の段階で鉄板ですからいじりようがないのですが、この戦いによってフラガもまたマリューにとって「帰ってこない恋人」になってしまうこと、そして続編において「彼女を忘れてしまうこと」を仄めかしています。

また、さりげなくノイマンとサイにも相手への想いを吐露してもらっています。サイはともかく、ノイマンにナタルへの恋愛感情があったかどうかはわかりませんが、これくらいの「思い入れ」があると、想像を掻き立てていいかなと。
バルトフェルドが死んだ恋人を想うシーンも好きですね。PHASE21の「妬けるわね」は逆転ならではの創作のセリフですが、うまく生きました。

今回アスランとカガリ、ディアッカとミリアリアのシーンには加筆修正を加えました(そういえばこっちはDESTINY本編では「なかった事」にされてしまった2組ですね)
ディアッカとミリアリアは結局最後までつかず離れずですが、それでも通じるものがあるように描けたと思います。本編ではキスやハグのない唯一のカップルでしたが、正直言って彼らの会話シーンが一番好きでした。

大幅に加筆したのはカガリがアスランに「ラクスとやり直せ」と助言しながら、グッサグサに傷つくという自虐的な部分です。これによってアスランの筋金入りの鈍さを演出し、やっと気づいたアスランが自分の気持ちを告白するという流れにしました。
ニコルやメイリンの気持ちにはこれっぽっちも気づかないアスランですが、カガリくらい表に出してくれるとさすがにわかるようです(だからこそ人づき合いの下手なアスランにとってカガリは大切な存在なんですね)

PHASE43で我慢させたので、カガリにはここでやっといい目を見せてあげられました。PHASE46の「頭こつん(本編にはあります)」も削ってしまったので余計です。
カガリは出会ったその日に3発もぶん殴られ、着替えを手伝わされ、皆からは「釣り合わない」と言われ、ラクスにヤキモキさせられてきたので、よかったよかった。
ちなみに本編の「きみは俺が守る」は、逆転ではホントに逆転してしまうので、カガリに「それは俺のセリフじゃないのか?」と言わせました。

なおストライクルージュについては、本編でカガリがあっさり乗った事が不満でたまりませんでした。まぁカガリが乗らなければアスランはあのままジャスティスで自爆してたろうなとは思うんですけど…

そこで逆種では、そもそもカガリが乗ると想定された機体ではないという設定にしてあります。
アサギかジュリが乗り換える予定だったのですが、彼女たちが相次いで戦死したため仕方なくカガリが乗る事になる展開にしました。
アサギは小説のようにヤキンまで潜入させてもいいかなと思ったのですが、ストライクRの件があるので本編どおりにしました。

だから「R」については「ルージュ」ではなくそのまま「R(アール)」と読んでいただきたい。
Rの意味は「RESPONSIBILITY」「RELIABILITY」「ROLE」などでもいいですし、まさしく「RESISTANCE」「REBELLION」「REVOLUTION」、逆に首長としての「REIGN」など。でもさすがに「REVENGE」はないですね。

まぁこれは冗談で、「R(アール)」の意味は普通に「ROUGE」や「RED」でいいんですが、機体そのものはルージュのようなピンクではなく白です。ピンクはいやですよ。本編でもあれはやめて欲しかったわ~

物語はジェネシスの第二波が月に撃ちこまれるところまで。ラスボスであるクルーゼも出撃し、最終決戦らしくなってきました。
DESTINYと違い、ぎちぎちに詰め込まれているとはいえ、SEEDは最終決戦への段階を踏んでいますよね。
DESTINYの最終回周辺のグダグダ感は、つくづく「ないな~、あれは」と思います。
になにな(筆者) 2011/05/07(Sat)18:15:26 編集



Copyright (C) 逆転SEED All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog | Template by 紫翠

忍者ブログ | [PR]